「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

#正倉院の気象 №5
正倉院宝庫の気象観測

宝庫内の気象観測は正倉院気象調査の主体をなすものである。ところが、既にのべたとおり、宝庫は曝涼といって毎年10月から11月にかけて20日ないし30日ほど開扉され、点検 手入れ 展観などが行われているほか、1年中の大部分は閉鎖されている。それゆえ気象観測も無人で行うため特別の工夫が必要である。そのためには、遠隔観測 長期巻自記器の2つの方法が考えれるが、遠隔観測はどうしても電気的な方法によらなければならない。だが、宝庫には交流 直流を問わず一切の電源引入れは許可されないので、長期巻き自記器によるほかなかった。
四百日巻き自記器 湿度は毛髪を用した。
昭和24年11月30日 曝涼が終わって宝庫が閉鎖される前に、2台の四百日巻自記器を庫内に設置し、翌25年空き開扉の際これを取り出した。

その観測結果が上記表である。

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#正倉院の気象 №4

環境による物質の品質劣化の程度を直接的にしらべる目的で、金属板のきうもり方を測定することを考えられた。定量的な測定が比較的容易なためである。昭和25年(1950)予備テストとして磨き上げた真鍮板(10×10㎝)を、大阪 生駒 奈良(正倉院中庭)に数日間放置し、また別の日に 大阪港区 上本町六丁目 布施市 豊中市蛍池に放置 放置前後の反射率の違いからくもり方の程度調べた。
秋には 正倉院開扉に際し、予め反射率を測定してある銀 アルミニウム 真鍮の板を宝庫内の各所に、同じ場所に2枚ずつ設置した。その一部には薄く油をぬった。


色々な調査 実験 試験等を行い 気象の観点からの宝物の保存に関して 調べた記録である。


 

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#正倉院の気象 4

正倉院事務所(鉄筋コンクリート)の室内においた唐びつ(杉材118㎝×185㎝ 高さ49.5戦深さ6せんの冠せ蓋つき 板の厚み2㎝ 塗装なし 有脚と無脚のものは脚の高さ2.3㎝天平時代の品)の中へ自記器と扇風機を入れ、時々スイッチを入れて扇風機をまわした。扇風機にスイッチをいれるとモーターの発熱のため箱の中の気温が上昇した。これらの実験結果か下記のことが得られた。
1)唐びつの中では湿度は急変せず、蓋を開いた日の平均湿度によって箱内の湿度の水準がきまる。気温の日較差は唐びつの中では外の半分で、位相のおくれは大体1時間。観測したデータでは外よりもわずかに低温であった。
2)扇風機をまわして箱内の空気を攪拌しても湿度の観測結果は扇風機を使わぬ時と同じであった。
3)木箱の中では温度の上昇に伴い1~2時間は湿度も上昇するが、その後は下降して約4時間後には大体旧に復した。



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#正倉院の概要 ④

奈良国立博物館収蔵庫の気象観測
奈良国立博物館の収蔵庫は、床の高い瓦葺き2階建ての鉄筋コンクリートの庫で、壁面と屋根の間には広い隙間があっけてある。内部は新宝庫と同じようにコンクリート壁面から約60㎝はなして木造の部屋をはめこんだ形になっている。
観測は2階のほぼ中央に自記の温度計と湿度計をおいて行った。気温 湿度 蒸気圧とも日変化はほとんどなく、ただ10日前後の周期でゆるやかな変化が残るだけであった。昭和25年(1950)1月9日から4月末までのデーターから気温、湿度の日変化量の頻度分布を上記表に示す。
正倉院仮宝庫内の観測を行い、湿度の日変化は2~5%で変化の仕方には外気の気温と湿度の影響がある の報告がある。


昭和25年の調査である これは今では 思いつかない 手計算での行われている
これらの資料が元となって 今の姿になってきて これからも 守られていく。

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#正倉院の概要 3
聖語蔵の気象観測
外部資料

正倉院宝庫では人が入って実験観をすることは許されない。それで、同じ校倉造りの聖語蔵について宮内庁の許可を得て昭和25年(1950)6月5日までの期間に実験観測を行った。
この期間中は庫内数か所に週巻きの自記温度計と湿度計を設置し、また6月16日、7月17日、18日 8月4日の4回は庫内の気温分布や微風の観測を行った。
分布は、床下30㎝まで顕著に冷却しており、それから床上130㎝まで下降し、それ以上280㎝までは殆ど一定で、。それ以上は観測の度毎に相当の乱れを示した。一方、熱線微風計による室内風の観測では、垂直気流は床下1mの高さで最も旺盛で、それから上下に風速が減少していた。積み重ねた校木の間には隙間は全くなく、外気が出入りすると思われるのは、床板の隙間と、屋根裏と壁体の継ぎ目にある孔の付近では1m/sec近くの気流があった。しかし、孔から10㎝も離れると、風速は10㎝/secくらいに急減しており、孔から入った気流がすぐに拡散していることを示していた。


昭和20年半ばの観測結果である
専門家においても 今から考えれば 観測機器は不十分なもにであるが、
多くの人々がこの宝物の保存に携わり 大切にしてきたことが 伺うことが出来る。



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