「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの「うのん」から大和気象歳時記 十津川郷の昔話

飛ぶお椀


これは果無にあった話じゃ
果無に果無谷ちゅう谷があって、そこに果無滝があるのを知っとるか。あんまり大きい滝じゃないけんどのう。
むかしむかしのことじゃった。いつの頃から月一回、昼すぎくらいになると、この滝からお椀が飛んでくるんじゃ。「ウウーン
という音をかすかにたてて飛んでくるんで、すぐわかるんじゃ。迷惑かけてはならんと思っていたのか、同じ家に続けて飛んでくることはならなかったらしいよ。
飛んできたお椀h、まるで目がついているようで、めあての家の人が外で働いておれば、その人の側に、家の中におれば、その空いた窓からスーッと入って目の前にとまるんじゃ。
お椀は何しに来たと思う。お椀の着いた家の人は、その中へ麦飯や粟飯をてんこもり(山盛)についでやるんじゃ。漬物があればそれもつけてな。そうするとお椀は、ファーと浮いて「ウウーン」と果無滝へ帰っていくんじゃよ。
あるときのことじゃ。いつものようにお椀は飛んできたよ。そしてちょうどマヤゴエ(牛の糞)を出している男の前に止まってしまったわ。その男は、大層めんどくさがりやであった。ちらっとお椀を見たが、臭さは臭し、おまけに暑い日であった。
「ええい、このくそ忙しいのに、しちめんどうくさいお椀じゃ、この牛の糞でも食らえ。」
いきなり、お椀の中へ糞をほり込んでしまったんじゃ。
おわんはそれでもゆっくりうきあがると、
「ウウーン」と小さい音をたてて、いつもの様に滝へ帰ったんじゃ。
それっきりなんじゃよ。お椀は、もう二度と飛んでこなかったんじゃ。

■住所 630-8053奈良県奈良市七条1丁目11-14
■℡  0742-43-8152

×

非ログインユーザーとして返信する