「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記 十津川郷の昔話

底なし田
猿飼の高森には、底なし田がありました。



あれは、あたしがまだ小さかったころ、高森の親戚の家へ遊びに行ったときのことでした。
きょうは、在所のおばあさんたちが寄って、宮田(神社の水田)の田植えをする日だったというのです。
ところが、この宮田は名にしおう底なし田じゃったらしく、いったんはまりこんだら、たいへんなことになると、おばあさんたちはたいそうおびえていました。はまりこまないようにと、在所の衆は、この田んぼに大きな松の丸太をたてよこにして沈めてありました。
わたしにも田植えをさせてとせがんだら、おばさんたちは、
「泥の中の丸太を踏み外したらあかんぜ。」
といいながら苗を取ってくれました。わたしは、いわれるままに、おそるおそる丸太を足でさぐりながら、苗を植えたのを今もおぼえています。
やっと、田植えがすんで、おばさんたちと一服しているとき、おばさんの一人が湯呑のお茶をすすりながら、こんな話をしてくれました。
「ずっと昔、在所のある人が、うっかりして、この田んぼに臼をまくりこんだんじゃ。すると、臼は、ずるずるずるとみるまに泥の底へ沈んでしもうた。さあ、たいへんと、在所の衆みんなで、いっしょうけんめい田んぼの中をさがしたものじゃ。けんど、いくらさがしても、とうとう臼はみつからんかった。しかたなく、あきらめかけていたら、何日かたったある日、高森の下を流れる大川(十津川)のいちざこ渕に臼が浮いとるというので、行って見たら、その臼は、宮田にころがりこんだ臼に間違いなかった。」と。
この高森の底なし田は、桑田のいちざこの渕へ出てくるというのでした。
わたしは、子ども心に気色悪いことと思い込んでいたものです。

■住所 630-8053奈良県奈良市七条1丁目11-14
■℡  0742-43-8152

薬師寺近くの「うのん」から大和気象歳時記 十津川郷の昔話

滝の主
昔の年寄りがよう言ううておった。
「グチナワが大蛇となり龍になるには、山で一千年、川で一千年、そして海で一千年、つごう三千年もの間、きびしい修行を積まにゃあならん、そして、三千年の修行を終えたら大蛇となって天に舞い昇り、そこで龍となって、ふたたびこの地上に舞い下り、大きな滝をえらんで、そこをすみかとする。」と。
年寄りは、さらに
「大きい滝には、たいていその龍がおる。折立の猫又、大野のシラクラの滝、七色の十二滝、中原川の牛鬼滝(うしおにだき)、小川の大泰には主がいるということじゃが、その主がいるということじゃが、その主の中でも一番偉いのが猫又の龍らしい。正月の朝には、東の空から錦の雲がこの猫又の上に飛んで来ると、昔から言われておる。」



と、言うていた。
また、滝の主のことでは、こんな話もある。



昔、武蔵に源蔵というひとりの木こりがおった。ある日、源蔵がハツリ(ヨキの一種)の柄にする木を探しておったら、ちょうど大泰の滝の上でいいのが見つかった。
源蔵は、早速その木を切り倒した。ところが、その木は、そのまま滝つぼへ落ち込んでしまった。大泰の滝つぼは、地元の人が、「小豆八斗まき」(百二十キロ)と呼ぶほど大きな渕で、木は底深く沈んでどうすることもできなかった。源蔵が残念がって青い渕をながめていたら、渕いっぱい見るみるうちに白くギラギラと光輝きはじめた。その白くひかるものは大きなウロコじゃった。
「これはえらいことになった。昔からこの渕には主がいると聞いておるが、これはその主にちがいない。」
とあわてた源蔵は、そのまま玉置山へ登り、七日七夜こもっていしょうけんめいに祈祷した。そのせいかその後、源蔵に大泰の主のたたりはなかったそうな。

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薬師寺近くの「うのん」から大和気象歳時記 十津川郷の話

はくらんさん



昔、野広瀬に小さな谷があっての。
その谷には、丸木橋がかかっておった。
村の人が川津へ用に出るには、どうしてもその谷を渡らなあ行けなんだのじゃ。
ところが、この谷を子供を産んで日数の少ない女が通ると、必ず病気になるなど良くないことがおこったそうじゃ。
そんなことがあまりにも続くので、困った村人達はうらなってもろうたんじゃと。
そうしたら、
「わしは、親の谷に住んでいた白龍じゃ。みんなを驚かせるので姿は見せられないが、親の谷(大字小井)が荒れてすみにくくなり、住み良い所を探してここまできたのじゃ。どうぞ、ここで祀ってくれ、祀ってくれれば女を守る神になろう。」
と、言いうたそうじゃ。
そこで村の衆は、道のかたわらに川原石を立てて、白龍さんを祭り,通る人ごとに花や食べ物をお供えして拝んでおった。
それ以来、野広瀬では、お産で死ぬ人もなく安産の神様と崇められたのじゃ。
それを伝え聞いた遠くの村からも、お参りに来る人が絶えなかったということじゃ。
白龍さんは、いつしか「はくらんさん」と呼ばれ、ダムで水没後は、川津に祀られているんじゃよ。


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薬師寺近くの「うのん」から大和気象歳時記 十津川郷の昔話

おならのうた

むかし、木こりのじいさんがおった。
ある日、いつものように奥山に入って木をこっておった。
すると、高い梢のほうから、きれいな小鳥のうたが聞こえてくるのじゃ。
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
じいさん、木をこるのも忘れて、このふしぎなうたに耳をかたむけていた。そのうたはだんだん近づいて、とうとう、すぐそばの小枝に小鳥が下りてきた。黄色の羽、くるくるしたまっ黒な目、青いくちばし、それは、今まで見たこともないかわいい小鳥じゃった。
じいさん、ポカンと大きな口を開けて見とれていると、小鳥は何を思ったか、ピョンとその口の中へ飛び込んできたもんだ。
じいさん、びっくりした拍子にひょいと小鳥を飲み込んでしもうた。
しばらくたって、じいさん、おならをすると、
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
と小鳥のうたそっくりに鳴るのじゃった。
おならのうたは、夕方、山を下りるときも、夜、布団の中に入ってからも、
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
と、うたをうたうようになんべんもなんべんも鳴るのじゃった。
このうわさがやがてお殿様の耳にも届いた。
「なに、おならがうたをうたうと。ぜひ、きいてみたいものじゃのう。」
やがて、お殿様の前で呼びだされたじいさん。
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
「こがねさらさら、ヒョッカラ、ヒョンヒンヨー。」
と、うつくしいおならのうたを鳴らしてみせたから、お殿様はたいへん喜んで、たくさんのごほうびをくださった。
この話を隣村の欲ばりじいさんが聞きつけた。その欲ばりじいさん、早速やってきて、
「どうすりゃ、そんなおならがならせるんじゃ。」
と、たずねるから、
「大豆を一升(1.8リットル)ほど炊いてたべたんじゃ。」
と、でまかせをいうと、
「よし、わし三升(5.4リットル)食べて、もっとどっさりごほうびをもらおう。」
と、ひとりごとを言い、早速、無理して三升の大豆を平らげると、勢いよく殿様の御前にやって来た。
「申しあげます。このわしは、もっともっとおもしろいおならをしてご覧にいれまする。」
と、腹と尻にうんと力を込めて気張ったものじゃ。
すると、どうだろう。おならどころか、出たのはくさいくさいうんこの山じゃった。
殿様、まっ赤に怒って、尻を針で刺す刑を言いつけた。
やがて、お尻を血でまっ赤に染め、足をひきずりながら逃げ帰った欲ばりじいさんを見て、家の者たちは、
「じいさん、赤い風呂敷にごほびどっさり包んで帰ってきた。」
と、大喜びしたということじゃ。

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薬師寺近くの「うのん」から大和気象歳時記 十津川郷の昔話

飛ぶお椀


これは果無にあった話じゃ
果無に果無谷ちゅう谷があって、そこに果無滝があるのを知っとるか。あんまり大きい滝じゃないけんどのう。
むかしむかしのことじゃった。いつの頃から月一回、昼すぎくらいになると、この滝からお椀が飛んでくるんじゃ。「ウウーン
という音をかすかにたてて飛んでくるんで、すぐわかるんじゃ。迷惑かけてはならんと思っていたのか、同じ家に続けて飛んでくることはならなかったらしいよ。
飛んできたお椀h、まるで目がついているようで、めあての家の人が外で働いておれば、その人の側に、家の中におれば、その空いた窓からスーッと入って目の前にとまるんじゃ。
お椀は何しに来たと思う。お椀の着いた家の人は、その中へ麦飯や粟飯をてんこもり(山盛)についでやるんじゃ。漬物があればそれもつけてな。そうするとお椀は、ファーと浮いて「ウウーン」と果無滝へ帰っていくんじゃよ。
あるときのことじゃ。いつものようにお椀は飛んできたよ。そしてちょうどマヤゴエ(牛の糞)を出している男の前に止まってしまったわ。その男は、大層めんどくさがりやであった。ちらっとお椀を見たが、臭さは臭し、おまけに暑い日であった。
「ええい、このくそ忙しいのに、しちめんどうくさいお椀じゃ、この牛の糞でも食らえ。」
いきなり、お椀の中へ糞をほり込んでしまったんじゃ。
おわんはそれでもゆっくりうきあがると、
「ウウーン」と小さい音をたてて、いつもの様に滝へ帰ったんじゃ。
それっきりなんじゃよ。お椀は、もう二度と飛んでこなかったんじゃ。

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