ガタロの恩返し 大塔村
ずっとずっと昔の話でな。
ある村に助ヤンという人がおってな。生あたたかーい風がふきよる晩、せっちん(便所)に入ってやったら、落しのしたからニュと、猿のようなけだものの手が出てきよってな。そいで、つめたーい手で、お尻をなでるように、しよたんで、助ヤンは、
「エイッー」というて、持っていた山刀で、つめたい手をきりおとしたんや。すると、
「ヒイッー」と悲しい声をあげて、けだものめは逃げて行きよってんとー。
助ヤンは、さっそく切り落とした手を持って家へ帰りやってん。
そいで、ちょっとたったころ、年頃の娘さんが、袖で片手をかくしながら、はずかしそうにやってきやってなー。
「あのー。わたしはこの裏のかわっぷちに住んでいるもんやの。つい、わるーいいたずらをしちゃってすみません。もう、これからはしないわ。そいで、切り落としたわたしのものなの、どうか返してー」
と泣きながらたのまったんや。
そいで、助やんは、何もいわんで、切りとった片手を娘さんに返してたらってんとー。
そいから、いく日かたったある日、娘さんは、もいいちどやってきやったんや。ところが、切り落とした片手がちゃんと、もとのままになってるんで助ヤンは、
「どやって、つないだんや」
と聞かってん。すると娘さんは、
「わたし切り傷にめっそうききめのある妙薬を知っとるや。
そいで、娘と思っていやったのは、実はガタロ(河童)が化けとったんやがな。娘さんが教えよったきずぐすりは、いまも「蒲生の錦草・祐玄湯」っていうて、伝えられてんやねと。
外部資料
場所の背景
外部資料 平成まで実際に販売されていた。
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