「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん 大和気象歳時記

薬師寺から少し離れて
「昔むかしの笑いばなし」から 「けちけち話」
むかしむかし、ある村に大そうけちな亭主がおった。けちもけちも、そのけちぶりは、あたりの村々で誰ひとり知らん者のおらんほどであったと。
ある日のこと、亭主は縁側でくぎに足ひっかけてしもうた。ふうふう足をふきながら縁側を見ると、なるほど、古いくぎがにょきにょきでとるわい、よし、今日はひとつ、縁側のくぎを打ちこんでやろうよ思い、女房を呼んだ。
「これこれ、隣へ行って金づちを借りて来い、三年前に一度、はかりを貸してやったことがあるで、まさかいやとは言わんじゃろ」
女房はさっそく隣まで行ったが、いっこうにもどって来ん、しばらくしてやっと帰ってきたかと思うたら、亭主に向かってこう言ったと。
「何に使うのかと聞かれたで、金くぎを打ちこむですと言うと、そんなもん打たれたら金づちがへってしまう、あるにはあるが、貸すわけにはいかんということです。」
「なんだと、とんだけち野郎だ、そんなことを言うて惜さんじゃったか」と亭主 大そうな怒りよう。やがてしぶしぶ「そんなら仕方ない。惜しいが我+の金づちを使うとするか」と、戸棚の中に大事にしもうとった金づちを出してきて、仕事を始めたそうじゃ。
また、あるときのことじゃが、村で火事の出たことがあった。
亭主は二階のもの干しからずっとその様子を見ながら、女房を呼んで言うたと、
「あの燃え具合じゃあ、もうだいぶんオキのできるころじゃろう、おまえ、ひとつ走り行ってきてオキをもろうてこい」

本のさし絵から


そこで女房は、さっそく火事場まで出かけて行ったところが、少しして、またまた何も持たずに帰ってきたそうな。亭主がわけをたずねると、女房いわく、
「それが、おまえさん、オキをくれちゅて頼んでみたところが、誰もかれもが、このたわけもんが! 人が一生けんめい火を消しとる時に何言うとる、危ないから早うかえれと、どなるもんで、オキは一本ももらえませなんだ」
すると、それを聞いた亭主、
「なにィ、そうか、そんなことを言うてオキは一本ももらえなんだか。ようし、わかった。そんなら今度うちの焼けたときは、オキは一本もやらんぞ」
と真赤になって怒ったということじゃ。

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