「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くのうのんから大和気象歳時記

薬師寺から少し離れて
「昔ばなし笑いばなし」から「彦一の生き傘」です
昔むかしのことじゃげな。彦一の家生き傘といわれる不思議な傘があったとな。
二階の軒下につるしてあるのが、なんでも雨が降ると自然に開き、天気になるとすぼむという、噂はどんどんひ広まって、とうとうお城の殿さんの耳にも届いたそうな。


「そんなめずらしい傘なら、ぜひ手に入れたいもんじゃ」と、殿さんはさっそく使いをだしなさったが、彦一は、
「こりゃ、うちの本尊ですけん、いくら殿さんでも、ゆずるわけにはいきません。」と。
こうなりゃ、殿さん、何が何でも傘が欲しいてたまらんようになんなさった。それで、金はいくらでも出すちゅうて使いをが、
「そうまで言われるなら仕方ないですのう。そのかわり、お礼はたんといただきますで」と、こういうわけで、彦一はようやく傘を渡してのう、殿さんから大金せしめたそうな。
さて、城では殿さんはじめ、家来のものまでイライラしておった。どうしたことか、いくら雨が降っても傘はいっこうに開かんのじゃ。それもそのはず、あの傘はただの傘でな彦一がこそっり開けたりしぼめたりしておったんじゃから。
いくら待っても傘が開かんじゃないか」と、今にも刀を抜かんばかりの勢いじゃ。
ところが彦一ときたら、首をかしげながら傘をじっと眺めるばかり、やがていきなり、
「おっ、これは飢え死にしとります。お城じゃ何も食わせてもらぇんかったと見ゆる。
殿さん、生きとるもんにゃあ、必ず食いもんがいりますで、何ちゅうむごいことを・・・」と言うやいなや、おんおん泣きはじめたそうじゃ。
これには殿さんもまいってしもうてな、返す言葉がなかったと。

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