「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

薬師寺から少し離れて
「奈良昔ばなし」から「北林のタヌキ」
 むかし、真菅村に北林という金持の家がありました。その家の主人はたいそうお人よしだという評判でした。ある挽のこと、この家であずきめしをたき、残りをなべにいれたまま台所へおいていました。ところが夜中に二ひきの親ダヌキが、たくさんの子ダヌキをつれてこの家にやってきました。主人が起きだしてそっと台所をのぞくと、いるわいるわ、たくさんのタヌキが、あずきめしをうまそうにたべていました。その様子があんまりかわいいので主人はそのままにして、へやへもどっていきました。「山には食べるものがないのでこんなところまで、やってきたのかもしれんなあ」と、つぎの夜、家のものといっしょにごちそうをつくると台所においておきました。「今夜もきてくれるといいが。」主人は昨夜のタヌキのくるのを今か今かと待っておりますとはたして夜中になるとたくさんのタヌキがやってきて、ムシャムシャうまそうに食べだします。「よしよし あすの挽はもっとごちそうをつくってやるからなあ。」つぎの夜も、そのつぎの夜も台所に、ごちそうを並べておきましたが、朝になるときれいになくなっていました。 さし絵から

ところがある晩のことです。主人がそろそろタヌキのくるころと起きだしたところへ家のものが、あおくなってかけつけました。「だんなさま、大変す、どろぼうが。」主人があわててげんかんにでてみると、刀をぬいたどろぼうどもが、家のものを集めて恐ろしいかおで立っていました。」「いのちがほしかったら金をだせ。」「そんあアホな・・・。」「何がアホなものか、早くしないと家のもののいのちはないぞ。」と、どろぼうのひとりが刀を主人のむねにつきつけていいました。「金ならみんなあげます。どうかいのちばかりはおたすけを。」そいって主人がおくのまへ、どろぼうたちをあんないしようとしたとき、「まて、まてい。」と声がして、ふたりのすもうとりが、ドスン、ドスンと入ってきました。「この家のものに手をだすやつは、ひねりつぶして、みそしるのだしにしてくれるわ。」と、まるでにおうさまのようにたちはだかってどなりましたので、どろぼうたちはふるえあがっていちもくさんににげていってしまいました。

さし絵から

「ありがとう、ありがとう」主人は、家のものとだきあって無事をたしかめると、ふたりのすもうとりの前にすわって、深々とあたまをさげて礼をいいました。「どこのお方か知りませんが、ほんとうにあぶないところをたすけていただいて、どうもありがとうございました。」ところがふしぎなことに、主人と家のものが、あたまをあげてみると、もうふたりのすもうとりのすがたは、どこにもありませんでした。みんなは、かおをみあわせて、「どこへみえたのだろう、ふしぎなことがあるものだ。」といって、それぞれのへやへもどっていきました。ぐっすりねむったころ、主人の夢のなかに二ひきのタヌキがあらわれて、「わたしどもは、いつもごちそうになっているタヌキです。これでご恩がえしができました。」といったので、主人はびっくりして目をさましましたが、タヌキはどこにもいません。すると、家のものがつぎつぎおきて、みんな同じ夢を見たというではありませんか。「タヌキでも、恩をわすれないんだなぁ」と感心して、ますます大事にしました。

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