「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん ら大和気象歳時記

「春日の森の昔ばなし」から
「地頭を置いた祟り」



古来、春日のお山は春日の神さまがお宿りになる神体山として、今も天然の原始林相をなしています。
ところが そのお山に茂っている樹木が、何十年かに一度、大量に枯れることがありました。
木が枯れてなくなるというとは、神さまがお宿りになる物がなくなるわけで、そうなると神さまは本の宮である鹿島へ帰るしか行くところがありません。それは春日の関係者にとってはまさに大問題です。
嘉元二年といえば今から七百年程昔、当時、鎌倉幕府は全国に守護、地頭を置いていましたが、大和の国だけは例外で、興福寺がその任に当たっていました。ところがこの年、寺内に騒動が起こったため、幕府は興福寺の領地にも地頭を置いたのです。


するとその年の夏、春日のお山の樹木が急に枯れ始め、青葉あ黄色くなってきました。
この異変を知った幕府は、これは大和の国に地頭を置いた祟りにちがいないと直ちに地頭を廃止しました。

その知らせがまだ奈良へ届かないうちに、誰いうとなく、「春日の神さまのお帰りだ」という声に外へ出てみると、四方の空が燃えるように光り輝き、無数の星が飛びかかって社殿に入るのが見えるではありませんか。社頭では、どこにも人影がないのに燈籠の火が一斉に消えて、暗闇の中に二本の松明の火が本殿に向かっていくのを、山木蘇生を祈る七日夜のお神楽の楽人たちも、はっきりみたということです。
お山の木は再び生き返ったのです。春日の神さまはまた、緑を守る神さまと申して良いでしょう。

×

非ログインユーザーとして返信する