「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

薬師寺から少し離れて
「昔むかしの笑いばなし」から「消化薬」
あるとき、峠の道を、一人の旅の男が歩いておった。
しばらくいくと、わきの草むらでがさごぞ何やらおる様子。ふと見るとまあ、たまげるような大きなうわばみが、たった今何かをまる呑みしたとみえる。腹を大きくふくらませて、苦しそうにのたうちっておるのじゃった。
男は何げなく足を止めて見ておったが、やがて妙なことに、うわばみはそばの青い草を食べ始めたんじゃ。すると、どうじゃろう、あんなにふくれておった腹が少しずつ小さくなってな、そのうちとうとうもと通りにになってそもうたそうな。
「こりゃあ、ええもんを見つけた」と、男は驚きながらもさっそくその草を何本かとって、また先を急いだと。
その晩のことじゃ。宿に着くやいなや、男は好物のそばを注文した。それが、食うわ、食うわ、調子にのって次から次へそばをたいらげてのう、やがて身動きできんほどに腹が大きくふくれ上がったと。ところが男は平気の平左、さっそくあの草を出してむしゃむしゃ食うと、そのまんま横になって寝てしもうたとさ。
さて、次の朝、いつまでたっても男が起きてこんなもので、心配した女中が部屋までのぞきに行ってみた。
そうしたところが、なんとふしぎなこともあるもんじゃ。男はどこにもおらんで、座敷のまん中には、山ほどのそばが、着物を着て寝ておっったと。

本のさし絵から

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