「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

薬師寺から少し離れて
「昔むかしの笑いばなし」から 「ぼたもち」
 その昔、あるところに、甘いものには目のない庄屋さまがおった。ちいとばかりの欲の皮も張っておって、何でももろうたお菓子は自分一人で食っておったそうな。
ところで、ここの家にまた、大そう甘いもの好きの下男がおった。下男は庄屋さまがいつもお菓子をひとり占めにするのが、不満で不満でならんかったと。
そんなある日のこと、庄屋さまは近所の家の祝いごとで、ぼたもちをもろうてきた。案の定、これも一人で食おうと、庄屋さまは重箱ごと戸棚の奥にしまいこんで知らん顔をしておった。
ところがこの様子を、下男がしっかり見ておったんじゃ。くやしくて仕方のない下男はもうどうにもがまんできんようになってな、とうとう戸棚からぼたもちを二つ三つつまみ出した。さっそく口に入れようとしたが、いや待てよ、めったにありつけんもんじゃ。どこぞでゆっくり食おうと思い考えた。
「そうじゃ、便所じゃ、あすこなら誰にもみつからん」
急いで廊下を走っていくと、思いきり便所の戸をあけた。
すると、どうじゃ、中では庄屋さまがぼたもちを食うておる最中、とっさのことにたまげた庄屋さまは、ぼたもちを喉につまらせて目を白黒、下男は思わず手にしたぼたもちを差し出して言った。
「へい、旦那さま、おかわりをお持ちしましたで」

本のさし絵から

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