「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

昨日から 全国に緊急事態宣言が発生られました。
緊張状態でお仕事されている方々には 感謝です。
先日からは 本のある喫茶店 うのん では所蔵しております 御子様から大人の方々まで楽しんでいただける本の中味を紹介させて頂いております。ホットした頂ける時間になれば幸いです。
「奈良昔ばなし.」から「三枚のおふだ」


 むかし、ひとりのこうぞうさんが、おしょうさんのいいつけで、山にクリ拾いにいきました。どんどん拾っているうちに山奥まできてしまったので、帰ろうとすると、おばあさんが、たくさんのクリのはいったかごをさげてあらわれ、「もし、こぞうさん、クリ飯を腹いっぱいごちそうするから、うちにおいで。」といいました。こぞうさんは、よろこんで、「きっといくよ。」と約束しました。お寺に帰ると、そのことを、おしょうさんにはなしました。おしょうさんは、「それは、きっと、山んばか、おにばばにちがいないから、いってはいけないよ。」といってとめました。ところが、クリ飯が腹いっぱい食べたいこぞうさんは、「わしゃ、どうしてもいきたい.」といってききません。「そんなにいきたいのなら、しかたがない。これを持っていきなさい。」とおしょうさんは、三枚のおふだを、こぞうさんにわたしました。「いのちがあぶないとき、身を守ってくれるありがたいおふだじゃ。」こぞうさんは、よろこんで、おふだを持って、おばあさんの家へいきました。おばあさんは、「ようきた、ようきた」といって、大きなかまいっぱい、クリ飯ををたいて、こぞうさんにだしましたので、こぞうさんは、ホコホコゆげたつクリ飯を、何ばいもおかわりして食べました。お腹がまんぷくになると、こぞうさんは、ねむってしまいました。それを見たおばあさんは、たちまち恐ろしい山んばのすがたになって、ほうちょうをとぎだしました。そのうち、雨がふりだして、雨だれが、ポッタン、ポッタン、と軒をうちました。その音が、「山んばに食われる、こぞうさん、にげろ、山んばに食われる、こぞうさん、にげろ。」ときこえたので、こぞうさんは、目をさましました。おばあさんは、と見ると、しょうじに、山んばのかげがうつっています。「こりゃ、たいへんだ。」こぞうさんは、そろりとしょうじをあけると、外へにげようとしました。山んばが気がついて、「こぞう、どこへいく。」「おっ、おしっこじゃ。」こぞうさんがこたえると、山んばはあやしんで、こぞうさんのこしをなわでしばると、便所の外でまっていました。こぞうさんは、なわをといて、便所の柱にしばりつけると、おふだを一枚はりつけ、おふだに「あのなあn山んばが『まだかあ』ときいたら、『まだだあt』といってや。」そういうと、こぞうさんは、便所の窓からにげだしました。

 山んばが、「まだかあ」ときくと、おふだが、「まだだあ」と返事をしました。しばらくして、また山んばが、、「まだかあ」ときくと、おふだが、「まだだあ」と返事をしました。あんまりながすぎるので、山んばを戸あけてのぞいてみると、こぞうさんのすがたが見えません。「こぞうのやつ、にげたな。」山んばは、風のように追っていきました。山んばは、たちまち、こぞうさんに追いついたので、こぞうさんは、二枚めのおふだを、「川になれ。」といって、ほうりました。すると、こぞうさんと、山んばの間に、大きな川ができました。山んばがおよいでわたろうとすると、波がじゃまをして、おぼれさせたので、山んばは」川を水をのみだしました。その間に、こぞうさんはいしょうけんめいにげました。そのうち、また山んばが追いついてきたので、三枚めのおふだをほおると、「砂山になれ。」といいました。

こんどは、こぞうさんと山んばの間に、大きな砂山ができたので、山んばは、すべちゃおち、すべちゃおちしてのぼってきます。こぞうさんは、その間に、お寺に帰ると、「おしょうさん、山んばに追われて、ようようにげてきました。どうぞ、かくまってください。」とたのみました。おしょうさん、お寺の一番奥のへやに、こぞうさんをかくまうと、山んばがくるのをまちました。やっとこさ砂山をのぼった山んばが、ハアハア息をきらしてやってくると、「おしょう、こぞうをだせ。」と大声でどなりました。おしょうさんがでてきて、「そういうおまえは山んばじゃな。どうだ、わしと化けくらべしないか。わしがまけたら、こぞうさんをわたそう。」といいますと、「化けくらべなら、まけん。」といって、山んばは、大入道になりました。「なるほど、大きいものに化けられるのはわかった。じゃが、わしの手の平にのるほど、小さいものに化けられまい。」h「ふふん、そんなものはわけないさ。」大入道は、たちまちきえて、山んばのすがたもみえなくなりました。おしょうさんが「山んばは、どこじゃ。」ときくと、「ここじゃ、ここじゃ、おしょうさんの足もとじゃ。」と声がするので、おしょうさんが、かがみこんでみると、なんと山んばは、アズキつぶに化けていました。おしょうさんが、それを手の平にのせて、「なかなかうまいこと化けておるわい。」というと、もちにつつんでパクリとのみこんでしまいました。「こぞう、これでこりたじゃろう、山んばは、もう二度とこんから、あんしんして修行にはげめ。」といいましたので、こぞうさんも、それからはすっかりおとなしくなりました。

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