「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

薬師寺から少し離れて
「奈良昔ばなし」から
てんぐのケンカ

本から

あるとき、神野山の赤てんぐと、伊賀の青てんぐが、ケンカをはじめました。赤てんぐと
青てんぐは、タソジという元気のいい男の子を、「でしにしたい」と思ったからです。タソジは、あらっぽいことがすきで、いつも神野山のてっぺんで、「エーイ、エーイ。」と、ぼうをふりまわしていまさいたが、その声がこだまして、とおい伊賀の山まできこえてきたので、てんぐが目をつけ、「おーい、タソジ。おれは伊賀の青てんぐだが、でしにならないか。」と声ををかけてきました。それをきいた神野山の赤てんぐは、「タソジは、わしが目をつけた子だから、おまえのでしにするわけにはいかない。」といいました。そこで、ふたりのてんぐは、「さきにいいだしたのはおれだ。」「いや、さきに目をつけたのはわしだ。」といいあいをはじめました。びっくりしたのはタソジです。「よし、かったほうのでしになろう。」と、杉の木にのぼって見物していると、そのうち、伊賀の山のほうから、小さい石のようなものがすごい早さでとんだ。岩はあとから, あとからとんできました。それを神野山のてんぐは、とびきりの術をつかって、ヒラリ、ヒラリとかわすと、「伊賀の山は今に、はげ山になるぞ。」となったので、「もうケンカはやめてくれ」といいました。「よし、わしがとめてやろう。」といって、神野山のてんぐが、ぐっと伊賀の山をにらむと、ピタリと岩がとんでこなくなりました。「ワッハッハ、わしにはかなうまい。」
というので、伊賀のてんぐは、それっきりかくれてしまいました。こうして、神野山のてんぐのでしになったタソジは、たちまち、とびきりの術をおぼえると、村からとおい奈良の町まで、ひととびいったので、村の人たちから、〈タソジのてんぐとび〉と、よばれるようになりました. そのときのてんぐのケンカが、ものすごかったので、今でも、神野山は、岩がごろごろしているし、伊賀の山は、はげ山がおおいということです。

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