「紀州の龍神民話」
狸の水汲み
今は谷からきれいな上下水道引いてあるけど、昔はこのへんは日高川の水汲んでのんだんや、しかし、大水の時は川にごるので、このしもに岩の間から清水がちょろちょろ出とるその水を桶をにのて下の家からもかみの家からも汲みにいくんやの。水すくないので桶にためるの時間かかるは、そいで早よう行って汲もう思て桶もって出かけて行くと下からも来るんや。そいたら桶にたまるの待たにゃならんさか、ぼちぼつ行って見たら誰もきてないんや、来た様子もない。それから水ためて家にかへりカメツボへ入れといて又、汲みに降りて行きよると、また下からも桶もって誰かくるんやけど行って見りゃ誰もきてない。そんなことあったんやけど、狸ともそれは見ていないんや。