「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「川上村の昔話」から
「一つ屋の怪」
むかしね、旅人がね、道で日い暮らしてね。ほいて一軒家へたどりついたらしいですわ。
ほいて、
「今夜泊めてくれんか」ちゅうて言うたらね、
「ま、泊まってもらいます。ええとへ来てくれた。」喜んで泊めてくれてね、そのお爺さんがね
「まあ、これが縁やろさかい、今晩家(うち)で留守番してくれんか」て。それは、実はね、お婆さんが死んで、お爺さんが子供一人連れてね、子供を一人在所ね、隣りの村まで行くのに夜になってたりして、知らしに、行きようがないんやて、お婆さんひとり、死んだの置いといて。ほいてその、行きようがないんで、
「ええとこに来てくれた。留守番しとってくれ。わしは人雇いに行くんやさかい」いうことで、そのお爺さんが出たらしいんですわ。
ほいでしとったらね、いろり火い焚いてあったてね。ほいたら何こで、まあ昔の小っさい家やろさかい、その寝やしたるところが見えるらしいですわ、こっちかrさ。死んだらね、御飯よそってねえ、御飯を高う山盛りによそって、それに箸立ててね、頭のねきに供えるんですわ。その頭のねきの、箸立てたところにね、湯気がグズグズツと動きかけてんてね。ほいたら、もうびっくりして、こりゃ何てことやったやろ、死んだ者が生きてきたかしらん思ったら、そっから白い手がね、シュッと出てね、その御飯つかんで、シュッと入ってしもてんてね、湯気の中へ。びっくりしてね、さあ、もう、そうなったらこわいわね。見に行きどころやない。お爺の帰るのを待ちがねて待ちってね。
お爺が帰ってきてね、
「言うとくの忘れてん。子供が一人あってね。」
その子供はお婆の子やったで、お婆といっしょに寝とった、死んだお婆といっしょに。その子供が手ぇ出して、御飯つかんだ。死んだ人が手ぇ出したと思て、びっくりしたってね。

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