「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

薬師寺から少し離れて
「昔むかしの笑いばなし」から「この下に金なし」
これもまた、吉四六の話じゃ。
吉四六の畑のまん中には、代々大きな石があってな、これが吉四六の悩みの種。どかそうにも重いわ大きいわ、どうにもならん。何とかする方法はないもんかと考えた。
ある日のこと、吉四六は町に出て行くと、会うひとごとに言うて回ったそうじゃ。
「わしん家も、この前馬ば売って大金もうけた。けんど家においといたら危のうていけんでのう、どこぞにええかくし場所はなかろうか」
それを聞いた人はみんな、「あの吉四六のばかが、金もうけたちゅうて言いふらすやつがどこにおる。」ちゅうてな、大そうあきれ返ったということじゃ。
さて、それから少したったころじゃが、吉四六の畑の大石のそばに、これまで妙な立て札が立ったちゅわい。それもどういうことか、"この下に金なし"と書かれてある。
「吉四六はどこまで大バカか、あれじゃあ金のありかを教えるようなもんじゃで」と、村人たちはまたまたあきれ顔じゃったと。
一方、当の吉四六は二、三日札をそのままにしておいて、ある日そっとはずしに行った。そうしてあくる朝畑にでてみたところが、どうじゃ、あの石のそばに、またたまげるようなでかい、深い穴が掘られておるじゃないか。たいがい誰ぞがこの下に金があると思って、いっしょうけんめい掘ったんじゃろう。

本のさし絵から
そこで吉四六が、えい!とばかりに大石を推したところが、石はころんと転げてのう、うまい具合にその穴の中に入ってしもうた。そうして上から土をかぶせたところが、まあ、立派な畑に早変わり。
「これ、これ!」と吉四六はほくほく顔で家に帰ったちゅうことじゃ。

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