「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

薬師寺近くから少し離れて
「昔むかしの笑いばなし」から「吉四六の天井昇り」です。
むかしあるところに、吉四六という大そうとんちのきく男がおったちゅうわい。
あるとき、吉四六は村に妙な立て札を立てた。
"三月十一日、正午、畑にて吉四六の天昇りいたし候"
さあ、村ん中は大さわぎ、一体何が始まるかと、村中その話でもちきりじゃたと。
こうしていよいよ天昇りの日、気の早いもんは朝から畑に来て待つっておるほど。やがて昼近くなると、あっちからこっちから村の衆がぞろぞろ集まって来た。と、そこへやって来たのが吉四六じゃ。
「みなさん、わしもいよいよ今日、天に昇ることになりました。つきましてはお願いがござりますが、天へはこのはしごを伝わって昇りますけん、誰ぞ下でおさえておって下され、それから、わしも最期はにぎやかにいきたいおですけん、他の方々は下で踊りながら、”天昇りは危ないぞ”と言って下され。それではみなさま、どうかお達者で」

こうして吉四六は、すこずつはしごを上がって行った。下では、村の衆が天を見上げながら「天昇りは危ないぞ」と、そこいら中を踊り回る。吉四六ははしごのてっぺんから下の様子を見ておったが、するするっと下りてきてのう、みんなに向かってこう言うたと。
「せっかく決心して昇りよりましたが、こうみんなに危ない危ないと言われると、やっぱりおとろしゅうなりました。そんなに危ないなら今回はやめにしますで」
それを聞いた村の衆、しばらくあっけにとられっとたが急にバカらしゅうなってな、ぶつぶつ言いながら家に帰っていったと。あとでひとり残った吉四六、しめしめとばかり、じゅう分ならされた畑を眺めて、ほくそえんどったちゅうことじゃ。

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