薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記 新薬師寺のお話
新薬師寺 (釣鐘のいわれと不思議なご利益)
外部資料
外部資料
境内を埋める萩と十二神将とで有名な新薬師寺には、重要文化財の鐘楼があります。そこには千百年ぐらい前の古い鐘楼がかかっており、「日本霊異記」の中に、こんな話が伝えられています。
敏達天皇の御世(572~585)のこと、都の近くの百姓に一人の男の子が生まれました。長ずるにつれてその子はものすごく大きくなあり、歩くたびに足の下の土があ二寸もへこむくらいになりました。大力なことは言うまでもありません。これでは百姓にもできないので、父親はその子を元興寺の小僧にしてもらいました。
調度そのころ、元興寺の鐘楼には毎夜のごとく鬼が出て、附近の人々を困らせていました。これを聞いた大力の小僧は、今こそ自分の力を用いて人々を救おうと、鬼に決闘を申しこみました。決闘の場所は鐘楼の上です。
そして夜中の一時・・・二時。ミシリミシリと音をたてて、鬼が現れました。毛をさかだてた鬼と小僧は、向かいあうこと数十分。いずれがスキをみつけらか、「エイ!」とかけ声も鋭く大格闘になりました。組んずほぐれつで鐘楼のふちを回ること数十周、さすがの鬼もかなわじとみたか、鐘楼を飛び降りて一目散に北の方角へ逃げ出しました。小僧も必死であとを追いましたが、なにしろ深夜のこと、ついに鬼の姿を見失ってしまいました。
この鬼の姿を見失った場所を今は不審ヶ辻子町(ふしんがつじちょう)といい、鬼の隠れた山を鬼隠山(きおんざん 今の奈良ホテルのたっている山)といいます。鐘楼は、その後、元興寺の鐘楼が焼けたので、今は新薬師寺の鐘楼にかかっているのです。鐘の周囲には、格闘の時にできた鬼の爪痕だという傷が、無数に残っています。そして、その勇敢な大力の小僧は、のちに道場法師という高僧になりました。
また新薬師寺は、ふしぎなご利益のある寺でもあります。
境内の二つの小さな池に鯉を放すと、鯉が身代わりに眼病や耳病を患い、放した人の病気がなおると言われます。また眼病・耳病の平癒を祈願する人が、本堂に奉納してある錐をたばって帰り(たばるとは、有難く頂戴すること)、薬師如来御真言を唱えながら患部をつくまねをすると、望みがなえられるそうです。そして地蔵堂の中には、紙貼地蔵(かみよりじぞう)という地蔵さんがあって、小さな紙切れを水につけこの地蔵さんの患部と同じ箇所にはりつけて祈願すると、霊験があらたかだといいます。それでその地蔵さんはいつも体中に紙を貼られておいでです。
■住所 630-8053 奈良県奈良市七条1丁目11-14
■℡ 0742-43-8152