「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「紀州の龍神民話」
狼の話
甲斐ノ川の熊という人が、たぬきにだまされようがちっともさびしがらなかったけど、この下(小家部落の下)の谷のま一つ下の谷(サイの谷)の奥で炭を焼いていた。子供等も大きなって一人で焼いておったら、何ぞチリンチリンと六文銭の鳴る音がすると思って便所しがたら、ひょっと起きて戸を開けて、ゆうっと見れば前な谷に何ぞ白いものが、ゆうっとのぼって来る。あっと思ったら、何と人の死んだやつを狼がくわえて背中に載せておる。死骸のつっとる銭がチリンチリンと鳴っておるのじゃ。そいから、何としょうしらんと思ったけど、ここであの狼を追うたら、あのしびっとをここにう置かれて狼に逃げられたらしまいやさか、黙って小屋に入って寝てから朝顔見たらおられなかった。そいからそこの炭山、もうさびしくてええ焼かなかった。この度胸のええ人でも、実際、狼のくわえたびっと見たら、もう、そこの道をよう通らなかったそうな。

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