「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「てんりのむかしばなし」
れんげの実らぬ所

外部資料 天理市 藤井町 龍王山

 「今年も豊年万作でありたいものだ。」
「ほんまに一粒でもたんと、米がとれるようにな。」
とはなしながら、村人たちは、田んぼの肥料になるれんげ草の種をまきました。
その年も春のうららかな陽ざしのもと、どの田んぼも花のじゅうたんを敷きつめたように、れんげ草が、美しく咲きそろいました。しかし実がちっともなりません。
「もう田かじんならんのに、げんげんぼの実がのらんな。」
「そうや、わしも毎日田んぼを見つめてるのに、一向実がつかんなあ」
「どうしたもんやろう」
「田をかじる旬がおくれては、田植えもおそなる。かなわんこっちゃ、もうかじまひょなあ。」
「わしもそうしまっさ。旬がおそなったら、かないまへんもん。」
「げんげんぼの種がわるかったんや。つぎはええ種選んで、まかなあきまへんな。」
「そうだんな、そうしまひょう。」
その次ぎからは、良い種を吟味してまきましたが7,やはり、田んぼを耕す時期が来ても、実がつきませんでした。村人たちは、腕を組み何が原因なのか考えぬきましたが、実たない理由はわからず、首をかしげて不思議に思うばかりでした。
それからというものは、村にある龍王山十一城主、十市遠忠が、信貴山城主、松永久秀に攻め落とされた恨みでれんげの実がならなくなったといわれるようになりました。
これは、標高五〇〇メートルの所にある、藤井町に伝わる話です。
※ かじる・・耕す

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