「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「てんりのむかしばなし」から
「大きな櫟の木」①

むかし、あるところに、大きな大きな櫟の木が天にもとどかんばかりにそびえていました。
その枝は四方に広がり、その村全部をすっぽりと包んでおりました。
村人達は、あのまばゆいばかりのお日さまの光を知らず、またあの澄みきった美しいお月さまの明るさも知りませんでした。
毎日毎日せっせと畑をたがやし、田んぼに出てはお米を使ってくらしておりましたが、この大きな大きな櫟の木のためにお日さまのめぐみも受けられず、お米は稔らず、他の作物もほとんど育たないのでした。その上、この木の上に天狗がすんでいました。天狗はいっちんの実を投げて人を苦しめたり、近所のにわとりや果物をとって暴ばれ、果ては毎年一人ずつ娘を人身御供に出せとまで言ったのです。
村人たちは考えました。
「あーあ、作物もお米もでけへん。この大きな木は何とかならへんかいな-」
「せやなー、困ったなあ。どないしたらよいのかのー」
村人達はその大きな木を見上げては、毎日のようにため息をついておりました。
村長を呼んで相談もしました。
「村長はん、あの木を何んとか倒してほしんやが」
「わたしもかねがね、どないかせんならんと思とるんやが、えらい大きうてわしらの手におえんからのう、どないしたもんやろ」
村長や村人たちは、その大きな木の下で、よい考えはないものかと頭をかかえておりました。
覚弘坊という立派なお坊さんが、中国から修業を積んで帰って来、天狗のいたずらに村人が大変苦しんでいるのをみかねて、何とかして天狗を退治してやとうと一策を講じました。

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