「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「てんりのむかしばなし」から
「梅さんの鏡」

むかし、豊田という村に大変、あずしい油屋の梅さんという男の人がくらしていました。梅さんは、ある夜ふしぎな夢をみました。それはススキが美しく咲き揃っている愛宕山へ自分が登っていくのです。ススキは月の光に輝いて、まるで銀の山に遊ぶような気持でいっぱいでした。
眼の前のススキの中から、世にまれな美しい女の人が現れ梅さんを手招きするのでした。
梅さんはその女の人を追いかけました。ススキをおし分け、一生懸命に追いかけました。ようようにして、もう少しで手がとどこうという時、女の人の姿は消えて、そこから一筋の光が空をさして登っていきました。その時、梅さんはふと、夢からさめました。
翌日、梅さんは夢の中で出会った美しい女の人を忘れる事が出来ず、その女の人の消えた場所を探して山へ登りました。夢の中で見た場所をあちらこちら探し歩き、やっと、女の人が自分の手から消えさったと思われる所を捜しあてました。
早速その場所を掘り起こしました。すると土の中から一枚の古い鏡が出てきたのです。
梅さんは、その鏡が美しい女の人から授けられたものと思い、大事に家にもち帰り、朝夕お灯明をあげ、お祀りしました。その清き心が神に通じたのか、油屋の商売も次第に繁盛し、村一番の金持になったそうです。それをねたんだ近所の人は、梅さんをだましにかかりました。梅さんはすっかりだまされて、鏡をある金持にゆずってしまいました。       それからの梅さんには不幸がつづき、村にさえおられなくなり、いつしか村から消えるように去っていったという事です。

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