「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「てんりのむかしばなし」から
「大蛇の恋」①


その昔、二階堂村から筒井村へ行く街道すじに、一軒の茶屋がありました。その茶屋の娘・コマノは、毎日通る美男子の飛脚に思いをよせるようになりました。
夕日も沈み、暗くなった頃、通りかかったその飛脚をコマノは呼びとめて、一夜をもてなそうとしました。コマノは、いそいそと男のもてばしをして、熱い胸の中をうち明けたのです。男は思いがけないことにびっくりしてしまいました。
「私は病気の親をかかえています。三年間は女房を持たんと神に近いました」と、コマノの愛をことわりました。男は夜の街道を走っていきました。コマノは恋しい男の後を追いました。そして、大きい淵のそばへやってきました。が、男の姿が見えません。そこは大きな松の木がありましや。男はその木へ登ってかくれていたのです。コマノが淵をのぞくと、月の光の中に男の顔が鮮やかに映っているではありませんか。コマノは「あっ、あのお方が」と。その水の中へ男の姿を追って飛び込んだのです。かわいそうに、水の中に沈んだまま、コマノはとうとう浮かんできませんでした。
それから後、この淵にコマノの亡霊が大蛇になって、女を見れば池の中に引きずり込むという噂が立ちました。ある日のこと、花嫁をのせたかごが一丁通りかかり、橋を渡ろうとした時です。雨がぽつりぽつりと降り始め、雷も鳴り出しました。籠かき達が雨具を取りに姿を消したところ、かごもろともに花嫁は池の中にさらわれてしまいました。それは「あっ」とい間の出来事でした。花嫁がさらわれるという大事に、村中はおおさわぎになりました。娘のある家では早く大蛇を退治して欲しいと願いました。村人達の相談の結果、大蛇退治のくじを引くことにきまり、村の庄屋にそのくじが当たりました。庄屋はすっかり当惑してしまい、どうしたらよいか考えてしまいました。

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