「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

コロナ渦の中 当店で所蔵している本を紹介しています。
ほっこりして頂ける 民話や大和の各地に伝わるお話を中心に紹介させて頂いています。
「吉野の民話」から
「蛙になった人間」
役行者が開かれた大峰山は現在、5月3日から9月二十三日までの間、山がひらかれています。冬の間は雪が多くて登ることができません。
そんな大峰山には多くの人たちがお参りにきますが、けわしい所つづきの修行がいやになったある人が、
「こんなところで修行しても、拝んでも何も御利益なんかない。」
などと、いろいろ悪口を言い、お参りに来たほかの人びとにも言い触らしました。すると、ばちがあたったのでしょうか、悪口を言っていた人は足をすべらせて崖から真っ逆さまに谷に落ちていってしまいました。
落ちた人は運のよいことに死にはしませんでした。しかし谷が深くて、誰も助けに行くことができません。そこで、お寺のお坊さんたちが集まって、
「助けてほしかったら、蛙の姿で助けてやろう。それで真人間になるか。」
と呼びかけました。
悪口を言っていた人は、助かりた一心で承知しました。そして蛙の姿でけわしい岩場をよじ登ってきました。こうして崖の上に登ってくることができました。しかし、人間の姿にもどすことができないので、蛙は吉野の蔵王堂に連れてこられました。蛙はお坊さんに、
「人間の姿にもどるには、たいへんな行をしないといけない。」
と言われました。蛙は、人間にもどりたい一心で承知しました。
そこで、吉野中のお坊さんが集まって、お経をあげてやりました。すると蛙は人間の姿にもどりました。悪口を言っていた人は、真人間に生まれ変わったということです。
蔵王堂で七月七日に行なわれる「蛙飛び」の行事は、こうしておこなわれるようになったと伝えられています。

×

非ログインユーザーとして返信する