「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「吉野の民話」から
「犬の飼わない村」
のちの天武天皇が、まだ大海人皇子のときの話です。大海人皇子は、天智天皇の息子である大友皇子と戦争をされました。
戦いのさ中、敵に追われた大海人皇子は、吉野川と高見川とが合流する窪垣内というところまで逃げてこられました。
そこには舟の渡し場があり、翁が魚をとっていました。翁は、舟をひっくり返して、その下に大海人皇子をかくしました。
そこへ、敵が放った、ミルメとカグハナという名前の二匹の犬がやってきて、舟のまわりを臭いをかぎながら、くるくる回りました。翁は、そばにあった赤い石で、二匹を殺していました。
すぐに敵があらわれて、
「なぜ犬を殺したのだ。」
と、怒ってどなりました。すると翁は、
「このくそ犬は、お祭りのお供え物を欲しそうにして、ねぶったからや。」
と答えました。お供え物は、神様にさしあげるとても大事なもので、それに手を出したのであれば、殺されても仕方ありません。敵はしかたなく去っていき、大海人皇子の命は助かりました。二匹の犬は、窪垣内の坂(くぼがいとのさか)の登ったところにほうむられました。
そこには今、窪垣内の学校が建っています。学校の庭のすみには犬塚の記念碑があります。学校の坂の下には、大海人皇子を助けた人をまつった神社があって「御霊さん」と呼ばれています。この神社には、狛犬がありません。また、付近の人たちはけっして犬を飼いません。自分たちが氏神としてまつっている先祖が、犬を殺して大海人皇子をお救いしたからです。
また、赤い石もぜったいに使わないということです。

×

非ログインユーザーとして返信する