「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

薬師寺をお守りしている薬師寺休ヶ岡八幡宮さんへの桜のアーチです
今年は一段と美しい桜のアーチです。


「吉野の民話」から
「虫のしらせ」
日本が戦争をしていたときの話です。私のお姉さんは子ども三人といっっしょに大阪に住んでいました。ある夜、私は、
「大阪が空襲にあって多くの人が死んだ。」
と聞きました。私は、大阪に住んでいるお姉さんと子どもたちが心配なので次の日に捜しに行こうと決めました。
その晩、妹と妹のお婿さんが私の家に来てくれました。お婿さんは家の戸を「どんどん、どんどん」とたたきました。そのとき、ふすまのところに大阪のお姉さんが現れて、さびしそうな顔をして見つめました。
私は戸をたたく「どんどん、どんどん」という音が聞こえているのですが、ものも言えずじっとお姉さんを見ていると、お姉さんはすーっと消えました。しばらくぼーっとしていると、妹のお婿さんが真っ青な顔をして玄関に立っていました。私が、
「どうしたんや。」
と言うと、妹のお婿さんは
「何かよく分からないけど、お姉さんに背中をおされるような感じがしてここへ来ました。家に入るとき、背中がぞーっとして寒気がしました。」
と言いました。私は、
「さっき私の前にお姉さんがさびしそうな顔をしてた立っていた。そしてすーっと消えていった。」
と、今見たことを話ました。
大阪へ行ってみると、お姉さんと子どもたちは防空壕の中で死んでいました。最後の別れに夢枕に立つ、というのはほんとうのことだと思いました。
もう六十年近くも前のことですが、今でもはっきりおぼえています。

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