「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「五條のむかし話」から
お大師さまと犬飼のお寺 ①
いまから、千二百年ほどむかし、京のまちから、南へいそぐたびびとがおった。
きんらんの法衣にみをかため、小さなにもつを、せおっていた。四十才をこえたばかりのおぼうさんのようだが、足どりはかるくとてもそうとは、思えなかった。まるい、おおきなすげがさがの下から見える。黒い目のかがやきは、なにを光っていた。秋もおわろうとするのか、錫杖の音がひびくたびに、かれた木の葉がおちた。
いうまでもなく 弘法大師さまであった。
「空海よ、日本へかえったら、真言の教をひろめ、人びとをしあわせにするのだ。」
唐の都、長安で、恵果大和尚にきかされたことばを、なんども思いかえしていた。日本へかえってからというものは、夜を日についで真言密教を、となえつづた。ところが、この教をきわめるためには、どうしても修行の道場(ばしょ)が、ほしかった。
「大師よ、のぞみを大きくもつがよい。あなたが、唐からなげた三鈷がおちたところが、修行のばしょだ。それは、紀伊の山なみをふみわけた、高野山だ。」
お大師さまは、仏のおつげを胸にだいて大和路を、南へ南へと、いそいだ。三鈷というのは、仏教をきわめるために、かくしもっているおまもりのことだ。

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