「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「絵の中からぬけ出る話」

むかし、ひとりの旅の僧が、山添村中峯山のお寺にお寺にとまり、十日あまり何もせず天王社(神波多神社)の壁に、牛一頭だけ描いて、ひょっこりと立ち去ってしまいました。その後、村内では稲の田が毎晩だれかに食いあらされます。いろいろとしらべましたが、それはお宮さんの壁にかいてある絵の牛が、夜なかにぬけだして、食べていることがわかりました。
それで、村の人は前の旅の僧をさがし、伊賀の上野で追いついてつれもどり、牛のかたわらに松の木を描き、なわでそのみきにつなぎとめたような形に、かえてもらいました。
それからはもう夜になっても牛は稲田をあらさぬようになったといいます。
この絵師は名高い狩野法眼元信であったということです。


これとよく似た話が長谷寺にあります。むかし、弁慶と牛若丸が京の五条の橋で戦っている絵をかいた絵馬を奉納した人がありました。
それから毎晩、長谷寺では剣げきのひびきが絶えませんでした。ふしぎに思って、お坊さんが、ある夜ひそかに、昔のする所へしのびより、聞き耳を立てていると、その絵馬そっくりの弁慶と牛若丸が出て、戦っているではありませんか。
お坊さんは驚いて、翌朝さっそくその絵馬を墨でぬりつぶしてしまいました。すると、その晩から剣げきの音が聞こえなくなったということです。
前に帯解奥の院の竜が絵からぬけ出た話がありましたが、これも同じような話ですね。
絵があまり上手で、ほんとの牛や、牛若丸や竜に見えるくらい、よくできているので、こんな伝説ができたのだろうと思います。

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