「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和の伝説」から
「登り坂のくさ神さん」


奈良から桜井に通じる上街道にそって、奈良市横井町の登り坂という所に、青井明神という小さな神社があります。
今は奈良から天理へ大きな道がその東方に新しくできているので、この上街道はさびれていますが、むかしはおもな街道で、人々はみなこの道を歩いて奈良から桜井、初瀬の方へと行ったものです。
この青井明神は、むかしはかさ神とも、ほうそう神ともいったが、一ぱんには、くさ神さんで通っていました。そして、くさができるとなおしてくださる神さんと信じられていたのです。今でいうと皮膚病といいますが、むかしはくさ、またはかさといったので、くさ神または、かさ神といいました。この神さんをまつってある地名をかさ神といって、奈良に45ヶ所ほどあります。たいていは笠の形をした石などを、むかしまつっていた所です。
むかし、小野の小町という女の歌よみが、京都の都の宮中の歌の会に出ていましたが、ある人のざん言(悪口)によって宮中を追われ、全国のあちらこちらを歩きまわっていました。そのうちに皮膚病にかかって困っていいました。ところが、ある夜、夢に翁があらわれ、「奈良から一里(約4キロ)南にいったところに、ホウソウ神をまつる神社がある。そこへまいり一心におがむがよい」
と告げました。
小町はそこへまいって、二十一日間、水をかぶって祈願しますと、満願の日に、くさはすかっりなおりました。小町は


はるさめは今一ときに晴れゆきて
     ここにぬぎおくおのが身のかさ


という歌を残して、伊勢の方へいってしまったということです。
かさと笠をもじった歌ですが、今もこの神社はくさ神さまとして、絵馬などをあげてお参りする人があります。

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