「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための 大和の伝説」から
「つんぼ春日」

奈良の春日山に、最初からまつられていた山の主は、つんぼでした。
山の主というのは、地主の神さまのことで、新しくその地にまつられた神さまや仏さまの前から、この土地にまつられていた神さまのことです。
春日明神が春日の地へ移ってこられた時に、山の主に向かって、
「この山を、三尺(約1メートル)貸てください」
と申しこまれました。山の主は、わずか三尺ぐらいのことでもあるし、耳も遠いので、こまかに聞きたださず、
「よいとも、よいとも」
と、こころよく承諾されました。ところが、その三尺というのは、面積ではなくて、山全体の地下三尺のことでありました。それで、今でも春日山の杉などの樹木は、ことごとく地下三尺より深くは根をおろしていないということです。
この山の主の春日大社楼門の西方、回廊ののきのしたにある摂社春日神社(榎本神社という)がそれです。すなわち、これがつんぼの神さまです。
明治時代ごろまでは、春日に参詣した人々は、必ずここにきて、
「春日さん、まいりましたぜ」
といいながら、その柱をにぎりこぶしでトントンと何度もたたいて、ほこらのぐるりを回ってから本社へ参ったということです。

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