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お正月行事
奈良県五條市念仏寺 陀々堂の鬼はしり 1月14日

外部資料

鬼走り行事は念仏寺の修正会結願の作法として行われているが、寺には安永2年(1773)の「村鑑明明細帳」が残っている。これによると「鬼はしりは念仏寺の陀々堂で行われ、念仏寺は坂合郡郷十二か村の氏仏といい、無足人の家から行事に出仕した」よあるが、現在は大津の人だけが出仕している。
行法の役目は鬼(父・母・子)三人が正月八日から別火にはいう。火のけがれはきびしく避けられる。スケ三人は別火しない。カワセは水桶と笹をもって火の粉を消す役で四人となっている。鬼の家筋というものはないが、一度ひきうけると毎年鬼役をつとめ、年をとると若い衆の中で力石をよくかつげる腕の強い力持ちの者に鬼役がゆずられる。十日は鬼の体にくくりつける鬼のこよりを作る。鬼の井戸では、鬼が別火にはいる時に水ごうりをとる。十二日には御供まきの餅つきとたいまつをつくる。もとは念仏寺のミズバヤシ(保安林)だった所の松を材料にして、胴のたけ八センチメートル(二尺四寸)に五十センチメートル(一尺六寸)の松根をさし、ハナミナワを五ヵ所にしめてたいまつは完成する。四つ作る。「十二日の夜よりっ荘厳儀あり」と記録あるが今はない。
十四日の当日は鬼は水ごうりをとり、午後4時ごろからたいまつに火をつけないで鬼走りがひととおりおこなわれる。その午後、陀々堂の前の広場でゴクマキがある。御供まきの餅の米はかつての郷十二ヵ村からだされ、約百五十キロリットル集まる。ゴオウ(牛王)さんと呼ばれている牛王札を柳の枝にはさんで参拝者にくばっていた。宵の八時ごろから大般若経の転読があり、終わりと後堂(本堂の後4)の囲炉裏に護摩の火が僧侶によって移され、さらに小さいたいまつに別火されてこの明りで寺のすぐ前のダダ守(記録に別当とあり)である坂部氏の家に鬼を迎えに行く。この間、村人が代わるが牛王枝二本で内陣板壁をたたく。
麻布の衣装をつけた鬼が到着すると、まずカッテ役(先導役)が火のついた松明を両手で上げ水の字を空中で描き、続いて赤鬼の面の父鬼が右手に斧を持って現れ、助人が大松明を外陣口で鬼に渡す。
次に青鬼面の母鬼が槌を持ち、青鬼面の子鬼が箒木(ほんぼく)を持って現れ、それぞれ左手に巨大な大松明を抱え、力の限りにふりまわす。正面と左右の三か所の戸口で同じ動作をし、これを三回くり返す。その間、助人たちは鬼に介添えして、重い松明の動作を助けたり、水につけた笹の葉で、火の粉の仕末をしたりする。この時の鬼の活躍は実に壮快である。やがて松明の火も衰え、鬼は薄明かりの中を鬼の井戸に行き、水で松明を消す作法、火伏せをして、この行法は終わるのであるが、鬼の装束に巻きつけたハナワ(紙こより)を持ち帰ると厄除けになるといって,参詣者が競ってこれを奪い合う。


昭和61年 1986年発行の書物からです

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