「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「紀州の龍神民話」から
薬屋さんに化けた狸
むかしは、医者ないさか大和や富山から、置き薬屋さんがどんどん来たんや今でも来ますけどんねえ、ここから真妻ていいう所へ行って薬屋さんの泊まる宿はきまっとった。
ある日、宿の兄貴が道歩いとったら狸の子が道でうろついとるさか、面白半分に石うつけたら死んだんや。別にほしいことないさか、ほっといた。そいてその兄貴が畑仕事してたら、谷で、ばしゃばしゃいうのでひょいと見たら、狸や谷の緑をかぶったり、柴をくわえたりしとるんやね。ありゃ化けるつもりらしいと、じっと見ていると見る間に人になって薬屋に化け、荷物をひょいと背中へ負うて道へあがり、ひょいひょい歩いて行きよる。
兄貴や見とってから、よしよしありゃ薬屋になって内の宿へ泊って何ぞ美味いもんでも食うたろうと思とんのや。おどれいんだら殺してやろうと、仕事ほったらかしていんで見ると、もう奥の座敷へ上がりこんで薬の入れ替えやら、何やら勘定しとる。兄貴の家のもんに、ありゃ狸やでおら居る前で薬屋に化けるの見とかんさか、風呂入る時たたくんやいうて、湯かげんは如何でと言うていったと思うと、いきおなりたたいたら、ほんまに大狸やった。兄貴に先見やられたさかやけど、子供ころされた仇にと思てだまそうとしたらしい。;

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