「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「鳥栖地蔵」

吉野郡黒滝村鳥住峠の頂上、堀割の北側に、南面してお地蔵さんをまつった小さいお堂があります。この本尊は弘法大師が三国の土を集めて作ったというありがたい像で、次のような物語りがあります。
鎌倉時代の末、正応年間洞川村に皿屋佐平次という人が、夫婦仲もむつまじく、ひとり子の小平太の成長を楽しみに暮らしておられましたが、神童といわれた賢い小平太は十六歳の時に亡くなりました。両親のなげきは一かたではなかったが、佐平次さんは妻を呼んで、
「いつまでもなげいていてせんないこと。広い世間には小平太に似た子どもいるだろう。どうかして探し求めて、わが子と頼んでもらいうけ、二人で養育してはどうだろう」
といいますと、妻も賛成し、そこでふたりは諸国巡礼の旅に出ました。讃州(香川県)志度寺で一夜の宿をとって、眠りますと、
「佐平次よ、早く国へ帰って鳥栖山地蔵尊ををまつるがよいぞ」
と観音さんのお告げがありました。
そこで、ふたりは故郷へ帰って鳥栖山のお地蔵さんを拝みますと、わが子小平太の面影さながらの顔でした。なつかしさのあまり、ふたりはかかよって尊像を相抱いてうれし涙にむせびました。佐平次は法名を道偏(どうへん)と改め、お堂を建てておつかえしたということです。

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