「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「姫谷池」(ひめたにいけ)


五条市南阿太の奥の谷に一つの池があります。
むかし ある家の娘さんが、その池へ洗たくに行きますと、池の堤にかんざしが落ちていました。何気なく拾って頭にさしますと、そのかんざしが大蛇になって、見る見るうちに娘さんをのんでしまいました。
夕方になっても娘さんが帰りませんので、お父さんやお母さんは心配して、近所の人と一しょに池のところへ探しにいきますと、そこに下駄や洗たく物があって、娘さんの姿は見えません。
「これはきっと、池の主にのまれたのにちがいない」
と両親は大へん悲しみ、そこに石碑を建て、この池を姫谷池と称するようになりました。
池は、いまでもうす暗くて気味の悪い所です。


この姫谷池には、いま一つの伝説があります。
源平時代に平家の落人の一群が、この村の山奥へきて、かくれました。
その中には年ごろの姫君も交っておられました。姫は両親にも生き別れて、仇討ちの思いに燃えていました。そこへまた、ひとり平家の残党がこの村へはいって来ました。侍大将をつとめたほどの一方の勇士で、すでに妻子のある身分の人でした。姫は何とかしてこの武士の力によって一旗あげようと念願していました。そのうちに、いつかこの二人は夫婦の仲になり、姫は妊娠の身となりました。この時」、追手がきて男は非業の死をとげました。姫は失望してこの池の仲へとびこみ、池の藻屑と消えてしまいました。それでこの池を姫谷池といい、姫の亡霊がでて、道ゆく人を池の中へ引きこんだりするということです。

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