「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「神野の民話」から
「他惣治天狗「」(たそじてんぐ)
昔、大潮村に他惣治という男がいた。ある晩のこと、あまり月がよいので涼みにでて三十センチぐらいの大きなホタルを見つけた。それを獲らえようとしたが手が届かない。最期に松の小枝に止まるところまでおいつめたが、そこが神野山の頂きであった。
そしてホタルをよく見るとその正体は恐ろしい天狗であった。
「こらタソジ、逃げて帰るな。今夜からはおれの弟子になれ。」
と、その天狗は言った。タソジはおそるおそるそれに従い、天狗の弟子となって、空中飛びの魔術を修行した。
一方、村人はカネ、たいこを打ち鳴らして、
「タソジおらんか、タソジ、タソジ。」
と行方を案じて探していた。
そこへ帰って来たタソジのことばや姿の急にかわったのを見て気が狂ったのだといううわさした。
タソジの家は川のほとりにあった。家の中にはイロリがあかあかと燃えて、子どもたちは、
一、二、三、𠮷、ひるは馬方
夜はおうまのくつ作り
おうまはよく聞け初瀬の方では
米が一升で十三文
と、手まり唱を歌っていた。

大空を飛んでいる男がいた。「あれよ、あれよ」と目をやるとそれはタソジであった。
「ターソジーさーん」と声をからして子どもは叫んだ。タソジは七里(28㌔)もある奈良へ買い物に行くところであった。そしてものの半時間もたたないうちに奈良づけを買って来た。また上野へもアメを買いに飛んで行ったりした。
タソジはもう人間でなく天狗になったのだった。
それから三年目の春になって、タソジは行方を消してしまい、その後、タソジを見たものはだれもなかったということである。
また神野寺の西に天狗杉といって、高さ十数メートル、周り六メートルばかりの大杉がある。

幹や枝の皮がスルスルにはげている。この杉に天狗が住んでいて、タソジや弟子どもに術を授け枝から枝へとわたって行をしているので、そうなったと言われている。

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