「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「黒淵と乙姫淵」

西吉野村の黒淵は、丹生川(にうがわ)の流れにそい、「淵は四十八淵、森は四十八森」といわれ、たくさんの淵があります。そのうちに乙姫淵というのがあります。
むかし、大日川の音右衛門という人が、この淵へナタを落としましたので、すぐ飛びこみましたが、それきり浮かんできませんでした。ところが一年たった一周忌にヒョッコリと無事に帰ってきました。そして、そのいうことは浦島太郎そっくりでした。
淵の底には竜宮があり、ナタは竜宮の床の間に飾ってあったといいます。この音右衛門が竜宮から帰る時に、乙姫から、日やけの時は、この淵をかきほすとよいと教えられました。それ以来、ここを乙姫淵といい、雨ごいの時はこの淵をかきほしてからっぽにすると、大雨になったといい伝えています。
また、この淵の底には、美しい乙姫が住んでいるという話もあります。
ある朝、ある百姓家の戸がコトンと音がしました。そして
「音がしても、あけてはいけません。また姿を見てもいけません」
といい、戸口からお金をいれていきました。それから、毎朝お金いれていきます。家の人はあまりふしぎなので、ある朝、見てはならぬといいましたが、すき間から見ていると美しい乙姫が魚釣りざおをかついで、戸口へお金をおいてゆきました。しかしその次の朝からはもうこなくなったということです。
この淵に鏡石といってすべっとしたきれいな石がありますが、これは乙姫が姿見をするところだと土地の人は伝えています。

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