「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「二上山の嶽登と火の玉」(にじょうさんのだけのぼりとひのたま)

大和の山間地方では、毎年村中の人が山へ登ってお祭りをする嶽登りという行事があります。二上山のふもとの人々は大つもごりの夜、夕食をたべてから、二上山へ嶽登りをするということが、むかしから行なわれているそうです。
ところが、二上山の頂上に着くころに、はるか当麻から高田の方へ通じる大井街道の方を見ると、いつも大きな火の玉が一つ、ポカンと現われたかと思うと、四方に小さくくだけて散らかってゆくのだそうです。それで、あれは何の火だろうか、狐の火ではないかといわれていたといいます。
また、その火が多ければ、ことしは豊年だ、少なければ不作だともいいあったということです。



 ここまでが伝説ですが、今これを考えてみますと、二上山から東に当たる三輪山のふもとの三輪明神で行なわれる繞道祭(にようどうさい)の火ではないかと私は思うのです。
大みそかから元旦の一時か二時ごろになると、大きな松明がここで燃やされますが、氏子や付近の人が、手に手に、火なわや手だいまつを持って、この神さまの火をいただき、うちへ持って帰って、これでかまどをたいて正月のお雑煮を祝うのです。それで、遠い西の二上山の上から見ると、大きな火の玉が現われ、小さくくだけて西方へ散ってゆくように見えます。
それからこの三輪の大松明は末社末社をまわりますので、それは狐の火のように見えたかもしれません。

×

非ログインユーザーとして返信する