「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「北林の狸」

むかし、橿原市の曽我に北林という豪家があり、この家に長らく狸が住んでいました。
ある晩のこと、この家であずき飯をたたいて、残りをナベに置いて寝ました。夜中に主人が目をさましてみると、二匹の狸がたくさんの子をつれ、ナベのふたを取って、あずき飯をたべさせていました。
これはきっと狸の食物がないのだろうか思って、その翌晩からは、よい食物を作って出しておくと翌朝には、いつもすかっりなくなっていました。
「やい、金を出せ、出さなかったら、殺してしまうぞ」
とおどしたてました。一家の者は、ただぶるぶるとふるえているばかりでした。
そこへ、表の方から、ふたりの大力士が、どしどしとはいってきました。そして泥棒に向かい、
「やい、何をしやがるのだ。ぐずぐずいわんと、さっさと出ていけ」
と大声でどなりつけました。
泥棒は一目散に逃げ去りました。家内の人々はようやく我にかえり、力士にむかって、お礼をのべながら頭を上げて見ると、もう誰もいません。ふしぎに驚かされながら、しばらく眠っていると、主人の夢に狸が出てきて、
「いつもよい物をいただいております。ご恩返しに少々お助けしたばかりでございます。」
といった化と思うと、目がさめました。
これから、北林の一家は狸を命の親として、ますますていねいに取りあつかっていたということです。

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