「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「僧慶円と竜の玉」(そうけいえんとりゅうのたま)

いまから六百年ほど前のことです。三輪山のふもとに、信心深い慶円という坊さんが住んでおられました。
慶円は室生で勉強し、弘法大師の生まれかわりだといわれたほど、偉い人でした。
ある日、久米仙人が女の人を見て、空から落ちたという川のほとりを通りかかられました。日は暮れかかっていましたが、そこには、またきれいな女の人がいました。
「あなたは、いまごろ こんな所で、何をしているんですか」
と慶円がたずねられますと、女はこちらを向きました。それは竜が女が竜に化けているのですが、慶円にはそれがよくわかっていました。
見やぶられた竜女は
「わたしは天に登りたいのですが、仏の教えを知りませんので、登れないのです。それであなたに仏の教えを聞こうと思って待っていました」
といいました。
そこで、慶円は仏の教えをくわしく説いてやりました。女は大そう喜んでお礼をいい、お礼のしるしにといって、美しい宝の玉を渡し、やがて竜の姿をあらわして天へ登ってしまいました。
竜を教化した慶円は、竜の玉をもらって、三輪山の平等寺に帰りまして、付近の人から父母のごとく慕われていました。
慶円が亡くなる時には、栗殿(おうどの)の極楽寺の松の上に、五色の雲がかかり、不思議な音楽がきこえ、二十五菩薩の来迎がありました。
墓には、今も竜からもらった竜の玉が入れてあるといいます。

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