「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「馬魚」(ばぎょう)

天理市の石上神社の南に、むかし内山永久寺という大きな古い寺があちました。内山という所にあるので内山寺ともいい、永久年間にできたもので永久寺ともいったのです。
明治の初年に全部なくなってしまったのですが、本堂前にあった本堂池という池だけが残っていてそこに馬魚という 草を食うめずらしい魚が住んでいます。
いまは石上神宮の鏡池へも、東大寺大仏殿前の鏡池へも移されていて、県の天然記念物に指定されています。大仏前の方は行く機会があるでしょうから、のぞいて見られると、馬魚が列を作って泳いでいるのを見ることもできるでしょう。鯉に似ていて鯉より扁平ですこし細いようです。
さてこの馬魚については、こんな伝説が伝わっています。
むかし、後醍醐天皇が京都から吉野山へおしのびになっていかれる時、この内山の永久寺までお越しになり、ここの萱の御所で御身をひそめておられました。その時、御乗馬がこの池のほとりで亡くなりました。その馬の亡魂がこの馬魚になったのだということです。


これはこの馬魚がめずらしく草を食うというので生まれた伝説なのですが、後醍醐天皇が吉野へ行かれる途中で、この寺へ寄られたということはあったようです。それで、後醍醐天皇の馬が馬魚になったという伝説になったのだと思います。
学者の先生の研究によると馬魚の実名はワタカといって、もとは琵琶湖と淀川にすんでいる日本特産の魚だそうです。永久寺の放生会(ほうじょうえ)の時に、誰かが淀川付近のワタカをこの本堂池へ放ったのが繁殖したのではないかということです。

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