「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記 十津川郷の昔話

音無川と十一面観音菩薩
十津川に沼田原という村がある。現在限界集落に近く 山奥にある村のお話です。

外部資料
沼田原から、焼く一里さかのぼったところに大谷がある。そこには、30メールの高さの大きな滝がある。

外部資料

むかし、むかし、この滝のずっと奥で、一人の仏師が、一心に十一面観音菩薩像を彫っていた。ところが、あまりの水音に気が散って思うように、のみをふるうことができない。考えあぐねた末に
「川の水よ、この菩薩様を彫る間は、どうか静かに流れてくれないか。」
と頼んだところ、願いはかなえられたらしく、水は、突然、川床から消えてしまった。それからは、心乱されることもなく、菩薩様を完成させることができた。この事があってから、この川の一部は川床を流れておらず、少し下流で、また水が流れ出している。それで、この川を音無川と呼ぶようになったのである。
さて、この菩薩像は、野瀬見(のじみ)のお寺に安置されていたが、明治初年の廃仏毀釈に人々は、村々のお寺をことごとく打ち壊し、灰にしてしまった。しかし、この時、十一面観音菩薩像と黒仏と呼ばれていた仏像二体は、心ある村の人の手で秘かに運び出された。黒仏は中井傍示(なかいほうじ)の宝泉寺に預けられたままになっている。菩薩像は、沼田原のお堂に移された。菩薩像は、太鼓の音を聞かねば暴れる、という言い伝えがあったため、毎年、旧の正月十日と盆の十七日には踊りを奉納した。踊りは、篠原踊りをややテンポをはやめたもので、詞はまったく同じであった。現在では、踊りもすたれてしまって、中井傍示から、お坊さんが来て拝むだけである。

■住所 630-8053奈良県奈良市七条1丁目14
■℡  0742-43-8152

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