「うのん」の気象歳時記ブログ

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加賀の金沢かねどころ

むかしむかし 初瀬(はせ)の里に生玉っていうた長者はんがいやはった。その長者に、わごというた美しい娘さんがやってんと。やがて二八(十六)のとしにならったら、
「わしをもろてんか」
いうて、ほうぼうから若ものがやってきやって、長者の門前は市場のようなにぎわいやってんが。
そやけど、もってこいにムコはんが無いもんやさかい、長谷寺の観音に
「どうかよいムコがきますように、顔はどうでもよろしおますから、たさしゅうて親をだいじにする人を」
そういう願をかけやって、お堂にこもってやったら、生玉長者はんと娘はんが同じような夢を見やってんと。
「お前たちの望んでいるムコには、加賀の藤(とう)の五郎よりほかにはない。わごよ、藤の五郎とお前は生前から宿縁がある。とく(早く)行って五郎の嫁になれ」
そいで、長者はんのみょうとは、喜びいさまってな、しっかり嫁入り道具こそらえて
初瀬を出立、山城、近江、若狭、越前といくつかの山河をこえ、とうとう加賀につきやてんが、そやけどなかなかわからひんで、あっちこっちと探し回ってようやく藤の五郎を見つけやってんと。
ほてから観音さんの御告げやさかい、美男子で、金もある申し分ないムコ殿と思うちやっったら、なんと、五郎っていう若もんは、イモばかり食べてて、きものはボロボロ、髪はボウボウで垢だらけ、よごれた顔はまっくろけやってんが。しかし、観音さんの御告げでここまできたんやから、どうしようもないいうて、藤の五郎はんに無理にムコ殿になってもらはってんと。
そいで長者はんは、娘のみょうとが一生あそんでいてもよいいほどの金をおいといて大和へもどらってんが。ほたら、慾のない五郎は、親の長者はんからもらった金を全部、貧しい人にやってしもうて、毎日イモを掘るのが仕事やってんと。
大和の初瀬へ帰らはった長者はん夫婦は、風のたよりに聞く娘と五郎はんの貧しいくらしをふびんに思やって、ひとつつみの砂金を旅人にたのんで加賀の国までとどけてもらやった。喜びやったわごさんは、親から送ってきた砂金の袋のことを、五郎はんに話しやったらな、
五郎はんな砂金の袋をもって田の中へでていきやって、飛んできよった雁(ガン)に
「ガンよこいこい これやるわ」
そいうて砂金をぜんぶなげつけやってんと。さずがのわごさんも、
「まあ、あなた何をされます。それは砂金と申して貴い宝でっせ。」
っていやったら、五郎はんは、
「こればっかりの砂金がなんだい。砂金が欲しけりゃ、いくらでもいくらでもあるわい」そういうてわごさんといっしょに、いつもイモをほっていやる畑へ行きやってなー。畑の砂を手ですくい、沢の水で洗うて、
「ほれ、見ろ」
そういうてさし出されら、全部がキラキラ輝く黄金の砂やってんと。
五郎はんは、それからも砂金なんぞ目もくれんと、イモがばっかし掘ってやってんkぇど、いつしか国司(こくし)ちゅうえらいお殿様が、この話を聞かはってなー、藤の五郎を召出していろいろなほうびをやったということや。
そいから金沢とよぶようになってんと。

■住所 630-8053奈良県奈良市七条1丁目11-14
■℡  0742-43-8152

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