「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「金龍寺の観音」

天理市の山田というところは、むかし山田道安(やままだどうあん)というえらい人の居城のあったところで、その山中の村里はなれた山奥に、梨の木谷という深い谷がありました。
むかし、ここにささやかなお堂がありました。ひとりの狩人が、大雪の日にここで一匹の男鹿を射ましたが、大雪のためうちへ帰れませんでした。それで、やむを得ず、その鹿を殺して食べ、お堂で一夜をあかそうとしましたが、しばらくするとおなかが大へん痛くなって食べたものをみんなはき出すというしまつでした。
その時、観音さまが頭の上に現れましたので、
「もうこれからは決して殺生はいあたしません」
とおちかいしますと、観音さまはお姿を消されました。
そんなことがあってから、この人はその観音さまを信仰していますと、ある日、またお姿を現わして、
「おそろしや梨の木谷の夜ふけて梢にさけぶ声は何鳥」
とうたわれ、高山へいきたいとお告げになりました。
それで、その人は観音さまを背負って、となり村の馬場の高山へお供しました。
そこは今の山辺郡都祁村大字馬場の高山というところで、ここに金龍寺というお寺が、高いところにありますが、そこの聖観音菩薩が、この梨の木谷からこられたという観音さまです。
高さ30センチにみたない、小さな木彫りの仏像ですが、飛鳥時代の作で、千三百年もむかしのものです。奈良博物館に出られたことがあります。
この金龍寺は山田道安の隠居していたお寺だといいます。

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