「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和の伝説」から
「不審ヶ辻子(ふしんつじがづし)」



奈良市の御所馬場と鶴福院町との間を通る東西のせまい横町を不審ヶ辻子といい、俗にフリンガヅシと呼んでいます。この面白い町名ができたいわれにこんな話があります。
むかし、御所馬場に松浦という長者が住んでいました。ある夜、ひとりの賊がこの家へ忍びこみました。長者はこの賊を押えて、現在奈良ホテルのある鬼隠山(きおんざん)から谷底へ投げこんで殺してしまいました。
その後、この賊ての霊が鬼となって、毎夜、元興寺の鐘楼に現われて、人をなあやました。
当時、元興寺には、後に道場法師となった偉い坊さんが、まだ小僧で修行していましたが、この小僧さんが進んで鬼を退治しようと申し出ました。そして鐘楼で待ち受けていますと、果たして鬼が現れてきました。そこで小僧さんが鬼とはげしい格闘をし、まだ勝負がつかないうちに夜が明けてきました。夜が明けてはと、鬼はあわてて鬼隠山の方へにへ出しました。小僧さんも続いてその跡を追いましたが、今の不審ヶ辻子の辺までいった時、たちまち鬼の姿が見失われました。それから、フシンガヅシという地名が出たといいいます。
この元興寺の鐘楼にあった鐘は、現に奈良市高畑町の新薬師寺の鐘楼にかかっていて当時、格闘の時の鬼の爪のあとというものが、その片側にたくさん残っています。

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