「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「川上村の昔話」から
「筆ふき草の話」
草でな、お大師さんが矢立てでな、字書くねん。筆を草でふいたら、その墨がな、ちょうど筆をふいた、はさんでふいたように、両方とも黒い植物がありまんねや。こら、今でもありますわ。ここらじゃないけどな、よう山行くと、葉をな、両方とも筆をぱーっとふいたようにな、一枚の葉の両方に、黒い墨がふいたような形になった草がありますねや。それがまあ、伝説いうんやなあ。これ、弘法大師さんが筆を、字書くのに筆と、この草でふいてんと、ちゅうことを、わしらは聞いてますねや。
まあ、草見たらなあ、ほんまに、ちょうど筆をふいたような形にな、一枚の葉で、ずーっと、こう、両方とも黒うなってますねやわ。わしゃ、どってまあ、それを両方あるさかいに、それをお大師さんにかたどって言うたんか、また、それは事実あったんかなあ思いますけど。わしらでも、ほんとに何やなあ、筆をふいた形やなあ、ほて、墨両方の葉も黒いなあ、こら墨の形やなあ、と思て、それ見る度に、ああ、こら、こんなやっぱりあんねんやろかい。不思議に思いますわ、この草もありますで。
こういう伝説はよう聞きます。

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「川上村の昔話」から
ほととぎすとうぐいす
ほととぎすていう鳥はな、あの、うぐいすに卵を暖めてもろて、かえしてもらうんでしょ、ひなに。なあ。ほんで、うぐいすに思いがあるわなあ、ほととぎすは自分が子供育てへんださかいに。自分の子供を。なあ。ほんで、うぐいすの声も出さんとあかんということやね。自分の声もうぐいすの声もなあ。ほんで、八十八声の声を出さんことにゃあかんちゅうねやろうな、ほととぎすは、ほんで、ええ声になるということやからな。あれは怠けもんやさかい。自分でよう卵かえさんちゅたなあ。

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「川上村の昔話」から
「鹿の親不幸」
着物でも、寒いときに、子供のときに、
「これ、上へ、その、ちょっとひっかけてしたらええ」とか。
「風邪ひく」とか言うて、言うことをきかんだときか、なんかやろうと思うんですけども、鹿の親が、あの、鹿の子に、あの、寒いから、それで首へ、その、真綿を出してきて、そして、
「首へこの真綿を、その、つけよ」と言うたけえども、その子供は親の言うこときかん子供で、
「首ぃみいてああいなもんつけたら、きゅうくつな」って言うて、尻へむいてその真綿をつけたので、それで、鹿の尻の方がまっ白に今もなっておって、その、それが目的になって、猟師に、その、鉄砲で撃ち殺されるというようなことになったと。
だから、親の言うことをきかなあかん、というような話、聞いたことがありますけどねえ。

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「川上村の昔話」から
かちかち山
 狸と兎と、はじめ、なんですかな、泥の舟に乗せられて、狸に兎が。あの、櫂でその舟を叩き割って、そしてだまされて、その、えらい目においうたとかなんとかっていうようなことがあったような気がするんです。それから、あの、敵討ちのために、柴を背負うて、そして、帰ってくるときに、あの、火打ち石で、あの、火をおこして、そして、あの、狸の背中へ背負うておるところのたきぎへ火をつけたと。カチカチて火打ちをする音がするんで、
「それは何か」っちうってて振り返って、
その狸がきいたら、
「いや、これはかちかち山やよってにカチカチ音がする」とか。
それから、大火傷をした狸に、今度は
「薬を塗ってやろう」っていうて、唐辛子のすりつぶしたんを、その背中へ一面に塗ったんで、狸がまた泣きだしたとか、ていうようなこと、合ったように思うんですけどね。

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「川上村の昔話」から
「兎と亀」
むかし、兎と亀とが、その、駆けくらべしょうらと。ほいで、相談ができたというようなことでな。ほしたらもう、兎はもう、ああして四つの足あって、けども、もう、はねる力は強いし、そらあもう、亀のごそごそ歩くんとしたら、そんな問題やないんやと。 
けども、亀はなあ、
「うん、おんどれ、ちょこざいな」と言うて。
あれは、それはもうおおいに働きもんやったそうやなあ。その、働きもんやって、親孝行やったと。兎にしたら、これはもう大急けもんでやったと。で、それと駆けくらべして、ほいたら、
「あんな亀さんに絶対負けるか」と言うて、途中で兎は寝たと。その亀はいっしょうけんめいなって、その間に歩いたんや。まあ、先っちょをよう行ったってよ。