「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

今日もコロナウイルス感染者数 更新 
外で活動も制限 
そんな時間に 当店で所蔵しております
本 その中で 奈良の民話を紹介しています。
今日からは 「てんりの むかしばなし」です

「金竜寺の観音さま」
天理市の山田の村里離れた山奥に、梨の木谷という、深い谷があります。
昔この谷にささやかなお堂がありました。そのお堂には、山の人びとの安全を守ってもらうため、観音さまがおまつりしてありました。
ある日、一人の狩人が大雪の日にここで、一匹の男鹿を討ちとりました。このえものを持って山を下ろうとしましたが、大雪のために道もわかりません。とほうにくれた狩人はその鹿を夕食にして、お堂で夜を明かそうと泊り込みました。すると夜中におなかが大変痛くなり、とても苦しんでおりますと、観音さまが現れて、「私のかわいがっていた鹿を殺して食べてしまったために、それほど苦しまなければならないのじゃ」と、いわれました。
狩人は「もうこれからは決して殺生はいたしません。申しわけない事をいたしました。どうぞお許し下さいませ」と、観音さまにお誓いしました。すると観音さまのお姿は、ずうっと頭の上から消えてしまいました。そしてあれほど苦しんだおなかもすっかりよくなり、無事家に帰る事が出来ました。この事があってから、この狩人は、その観音さまを信仰し、朝夕お祈りする様になりました。
ある日、また観音さまがお姿を現わして、「おそろしや、梨の木谷の夜ふけて、梢にさけぶ声は何鳥」とうたわれ、わたしを高山へ連れていってほしいとお告げになりました。それでこの男は、観音さまを背負って、隣村の馬場の高山へ、お移ししました。
そこは、今の山辺郡都祁村大字馬場の高山という所で、高い所に金竜寺というお寺があり、高さ五十センチに満たない小さな木彫の観音菩薩がまつられています。これがこの梨の木谷からこられた観音さまだと言われております。千三百年も昔の、飛鳥時代の作だそうです。狩人をしていた男の人が、背負ってきた観音さまにはこのようないわれがあります。



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