「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「大日堂の鐘」

大和高田市のまん中に大日堂という大日如来をまつったお堂があります。
幕末のころ、荒れはてていた大日堂の鐘をよそへ売りはらいました。
その鐘は大和郡山市の高田口にあるお寺へ売られてゆきましたが、ある夜、その鐘がここの和尚さんの夢枕に立って
「ふるさとの高田が見えませんので、どうぞもっと高い所へ移して下さい」
といいました。
そこで、和尚さんは檀家の人と相談して、
「せっかく買ってきたのを、返すこともならず、いっそ、よそへ売ってしまっては」
ということになり、道具屋の世話で、山城の高田村へ売ってしまいました。
ここでも寺の和尚さんの夢枕に立って、
「ここも高田でうれしいのですが、山が邪魔になって大和の高田が見えません。もっと高いところへ移して下さい」
と頼みました。初めは気にもとめなかったが、何度も夢を見るし、鐘の音も妙にさびしく聞こえます。檀家の人に相談しますと、村一番の老人が、
「それならよいことがある。あの鐘には見事な銘文を鋳こんであるので、鐘を勧進した和尚さんや庄屋さんや村人の、魂がこもっているからにちがいない。だからあれをなくしたらよい」
といいましたので、その銘文を一字残らずけづり取り、ねんごろに供養しました。
それからは魂のぬけた鐘は何の変ったこともなく、よい音色を村中に響かせているということです。

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