「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「天狗杉」

長谷寺の仁王門を入って、一の回廊をのぼりつめたところのも右側に、一本の杉が高くそびえています。この杉は天狗杉とよばれていますが、この杉にこんな話があります。
長谷寺第十四世の能化(のうげ  官長さんのこと)に英岳大僧正というえらいお坊さんがありました。伊賀の国の上野の生まれで、小僧さんの時から長谷寺へきて勉強し、修行しておられました。貧乏だったので苦学をされ、毎晩、回廊のつりどうろに灯をつけてまわり、残りの油をいただいて、自分の部屋のあんどんに灯をつけて灯をつけて勉強されました。
そのころ回廊の左右には大杉がじげっていて、そこにすんでいる天狗がいたずらをして、つりどうろの灯を消し、灯のさらをひっくりかえしますので、英岳の小僧」さんは大そうおこって、
「けしからぬ天狗だ。よし、わしがこれから、修行して、この長谷寺の能化となり、天狗のすむ杉を一本残らず、きりはらってやるぞ」
といって、発奮されました。・
それから五十年もたって、八十六の歳に、英岳さんはとうとう長谷寺で一番えらい能化になられました。
英岳大僧正は山内の寺々を再建するため、杉の大木をみんな、きられましたが、木こりが最後の一本をきろうとした時に、
「まあ、この杉だけはきるのを待ってもらいたい。わしは天狗のいたずらで、発奮して勉強したので、天狗はわしの恩人でもある。この一本だけは天狗のすみかとして、のこしてあげよう。」
といわれたということです。

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