「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和の伝説」から
「帯解奥の院の竜」

奈良市帯解町の奥の院の地蔵さんといわれているお寺の名は竜象院といいます。このお寺にこんな伝説が伝わっています。
むかし、このお寺の西方市の池に一頭の竜が住んでいました。ときどき村人を取って食うので、竜を退治しようということになりました。
池のつつみにかがり火をたいて、大さわぎをしましたが、一こう竜は姿を見せません。
そこへ一人の武士がとおりかかり、わしが退治してやろうといって、池のまん中へ矢をうちこみました。すると、たちまち、すさまじいかみなりと共に、大暴風雨になって、竜が池の中からおどり出ましたので、武士は弓を捨て、剣をぬいて、竜にきりかかりました。そして、ずたずたに切れた竜が落ちてきましたが、武士の姿もついに見えなくなりました。これは竜象院の名についての伝説ですが、いま一つ、この寺の本堂の天井の竜についての伝説もあります。
江戸時代の末、百拙和尚が、この寺を再興した、時に、本堂の狩野春甫という絵かきに、竜の絵絵をかいてもらいました。その後、百拙和尚がヒョイと天井を見上げると、竜のひげが水でぬれています。翌日、また見上げると、やはりぬれています。ふしぎに思って、そこから毎日見ると、同じくぬれています。
そこで和尚は、ある夜、ひそかに本堂にしのんで見ていると、竜は夜の十二時ごろになって、本堂をぬけだして、付近の広大寺池へ行き、つつみの上から首をつき出して、池の水をがぶがぶと飲んで帰ってきました。
その後も毎夜、そのとおりにしました。そこで和尚は考えて。昼の間に竜の目にくぎを
打ち、うろこを三枚墨でぬりつぶしておきますと、もう竜はうごかなくなったということです。
百拙和尚が、このお寺を再興して、竜を描いてもらったというのは史実ですが、それからあとの話は伝説であります。

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