「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「てんりのむかしばなし」から
「夏目谷の天狗」2


ある月の晩、呉作が夏目谷の方へフラフラと歩いていきました。男はほろ酔い気分で明るい月に見とれていました。ふと見ると、目の前にきれいな女の人が立っているではありませんか。「だんなはん、わたしをよめはんにしとくなはれ」と女に言われ、男はすっかりうれしくなってしまいました。
こんなきれいな女がわしの嫁になってくれるなんて、男は早速「おいらの嫁さんになっておくれ、負うたるさかい」と女を背負い、村へ帰っていきました。村の灯がついそこに見えているのに、なかなか村には行きつかないのです。男はあせりました。背中の女はだんだん重くなり、くい入る様に感じるのでした。とうとう男はその場へ座ってしまいました。夜があけてきました。「オヤっ、おまえは村の呉作どん、何してるんや」と村人が通りかかり、びっくりして見つめました。男はくたゝになって、大きな石を背中に負うていたのでした。男は夢からさめたように背中の石をおろして、嫁さんだと思って負うていた女が石になり、がっかりしてしまたのでした。


夏目谷の天狗は、ちょいゝ村人にこんないたずらをしたそうです。

×

非ログインユーザーとして返信する