「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

うのんから所蔵の本の紹介です。
☕のみながら コロナが落ち着いたら読みに 見に来て下さい
レアな本結構多くあります。


「五条の昔話」から
「雨乞い」
むかし、むかし、大ひでりの年ありました。いく日たって夕立雲一つ見えず、雨はひとしずくも降りませんでした。作物はみんな枯れてまいあがりどの畑も黄色くなってしまいました。田の水はなくなり土にひびわれさえ出来はじめました。
「稲が、枯れてしまう」
「こまった。こまったものだ。」
人々は田畑をみては、なげいていました。
ことに中之郷という地は、川の水が上流で取られてしまうから全くこまりました。
その時、大善寺のお坊さんは、学問のよく出来る何事も知って居る立派な人でしたので、村人はこのお坊さんにたのんで雨ごいをしてもらうことにしました。
「このままでは、作物はみんな枯れてしまって食物はなくなってしまいます。どうか雨をふらせてください。」
「よろしい。では、みんなのためにお祈りしましょう。」
お坊さんはこころよくひきうけて、龍王様にお祈りすることにしましたが、この神様はネブカ(ネギ)とキュウリが大きらいですので、
「雨をふらせていただくのなら、みんな神様のきらいなネブカとキュウリを食べないことを約束できるか。」
と村人にいいました。
「雨が降るのだったら、どんなことでもします。」
「ネブカとキュウリは絶対たべません。」
と村人たちは、かたく、かたく、約束しました。だれもネブカとキュウリは食べませんでした。
お坊さんは龍王様に一心にお祈りしました。夜もねずに何も食べずに祈り続けました。村人もお坊さんの声にあわせて祈りました。暗やみの中にみんなの声はひびきわたりました。一週間程たったでしょいうか。六月二十八日の夜、突然大粒の雨が降り出しました。
「雨だ!雨!」
「降ってきたぞ、降ってきたぞ!」
「ありがたい。ありがたい。」
みんなは、よろこびのあまり頭も体もびっしょぬれになるのもわすれて雨の降る中をおどりまわりました。手をあわせて龍王様にお礼をいっているおばさんの姿もありました。
不思議なことに、この雨は中之郷だけ降りました。水のなかった水田はみるみるうちに水がいっぱいはって、稲は生きがえりました。
それから三日目に一度は必ず夜分に大つぶの雨が降りました。この雨のおかげで村人はたいへんすくわれました。
中之郷のみんなはその後もネブカとキュウリは食べませんでしたが、いつとはなしにネブカとキュウリは食べるようになりましたが、初生のキュウリは川へ流して龍王様におそなえすることはいまも引き続いておこなっています。最初に雨の降った六月二十八日は中之郷の祭り日として記念しいまもこの日にはお祝いしてよろこびあっています。

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